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このサイトでは、彩嶺さんちの家族の会話を通じて、自然エネルギーのことを学びます。

NPO法人 埼玉自然エネルギー協会

Saitama Natural Energy Association

よくわかる自然エネルギー発電のお話し

その他の発電について

彩嶺さんちの家族

今日は、太陽光発電以外の自然エネルギー発電のお話です。太陽光発電に比べてまだシェアは低いのですが・・・・

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昨日は、太陽光発電の話をしたけど、今日はそれ以外の風力、小水力、地熱、バイオマス発電の話をしよう。ただ、これらについては、僕もあまりよくわかっていないところがあるので、物知り博士にたびたび登場してもらうよ。
わかった。
 
まず、自然エネルギー全体の内訳を物知り博士に教えてもらおう。→物知り博士のQ&A
太陽光発電が圧倒的ね。
 
そうだね。太陽というまさにどこにでも普遍的にあるエネルギーであること、屋根や土地に太陽電池パネルを設置すれば電気が得られるという比較的工事が容易なこと、さらにメンテナンスも楽ということなどが理由かな。それに、買取価格も少し高めだったことで、ソーラー設備を設置する場合、規模の大きければ大きいほど利益を上げられるという仕組みだったため、大きな資本力をもった企業がメガソーラーといわれる大規模設備を次々に作ったこともシェアがダントツの理由だね。
なるほどね。メンテナンスが楽といえば、うちも今のところ全くトラブルはないわね。
幸いにね。でも、太陽光発電でもトラブルはあるんだよ。
 
そうなの?たとえば、どんなトラブルがあるの?
 
そうだね。パネルが汚れて発電量が低下したり、断線やパワーコンディショナーの故障、あるいは配線網の電圧との関係で、発電した電気を売電できなかったりということもあるんだ。さらに、太陽電池パネルで使われている電子部品の故障などもあるそうだよ。
なるほどね。太陽電池と言えどもまったくメンテナンスフリーではないのね。
 
といっても、それほど発生頻度は多くないから、そんなに心配することはないよ。
 
わかった。
 
本当は、太陽光だけでなくいろいろな発電方法が均等に普及していくのがいいんだろうけど、風力やバイオマス、小水力、地熱などは、発電所を建設する場合、環境アセスメントを行う必要があったり、制度上の障害や地域で取り組むうえでの資金問題とか、系統への接続問題(費用、首都圏への送電網の利用制限など)とかの課題があったりして、普及が制限され、結果的に太陽光だけが伸びてしまった。そのため、太陽光発電の買取価格はどんどん下がっているんだ。
そうね。来年度はまた下がるんでしょうね。
 
うん、多分ね。次に風力発電だけど、これはまだ普及率が低いということで、下がっても小幅だろうね。文字通り風の力で風車を回し発電するんだけど・・・。
風車と言えば、オランダが有名ね。
 
あれは発電しているわけではないが、自然エネルギーを利用していることに間違いはない。昔の人の知恵だね。今、風車と言えばデンマークが有名だよ。→物知り博士のQ&A
へえー。
 
世界的には風力発電所の設置が多く、その発電能力は2015年には原発のそれを上回ったと言われている。そして発電コストも、米国・ドイツ・中国など設置数が多い国では火力発電より安くなっており(2015年)、最近では1kWhあたり3.0セントという例もあるらしいよ。
ずいぶん安いわね。日本円では3円ちょっと?
 
そうだね。これは、2013年に北アフリカのモロッコで稼働を開始した30万kWの風力発電所の入札価格だそうだ。
一方、日本では北海道や東北地方が風力発電に適した地域で、すでにいくつかの発電所が稼働している。まだまだ普及の余地はあるんだけど、前に言ったような問題に加えて、原発優先政策などのためにその普及が妨げられているのが現状なんだ。
そうなの。ところで、以前どこかでみたことがあるんだけど、風力発電の風車で不思議に思ったことがあるの。あれって、ゆっくり回っているじゃない。あれで、ちゃんと発電できているの?もっと早く回った方が、できる電気も多いように思うけど。だって、自転車のライトは、速く走るほど明るいし。
あれが早く回ると大変だよ。音もするだろうし。その辺のところは、物知り博士に教えてもらおう。→物知り博士のQ&A
なるほどね。よくわかったわ。ところで、業務用の大型は海岸や山の中腹などでよく見るけど、家庭用というのはないの。風さえあれば、夜でも発電するから太陽電池の補完になるわ。
家庭用というか、小型のはあるみたいだよ。それで発電した電気は電力会社が引き取ってくれるよ。
そうなんだ。
 
ただ、この場合はどうかわからないけど、他の発電機能のある装置と太陽光発電を併用する場合は、ダブル発電ということになって、太陽光発電の方の買取価格が下がるんだ。
へえ、そうなの。ダブル発電って?
 
ダブル、つまり発電装置が2つあるってことだよ。もちろん、電力会社に系統連系しているのが前提だけど。うちは、太陽光発電だけだけど、中には太陽光発電のほかに、たとえば都市ガスを使った燃料電池式の給湯機のように、お湯と電気をつくる設備を使っている家がある。この場合が、ダブル発電ということになるんだ。
そうなんだ。
 
このほかに、蓄電池や電気自動車の場合も同じくダブル発電ということになるんだ。蓄電池の場合は、ダブル発電の対象にならないものもあるらしいから、もし導入する場合は、よく検討した方がいいね。
そうね。うちは、蓄電池はまだ入れないんでしょ。
 
そうだね。国からの補助金も出るそうだけど、まだ高いからね。もうちょっと様子を見るつもりだ。
わかった。次は、小水力ね。なんで「小」ってついているの、普通の水力発電とは違うの?
普通の水力発電も水の力で発電機を回して発電しているから自然エネルギーの利用に違いはないんだけど、ダムで水を貯めて発電する規模の大きい発電のことなので、区別しているんじゃないかな。
小水力発電では、これとは違い、水を貯めるのではなく、水の流れをそのまま利用した発電形式(流れ込み式、水路式)なんだ。規模も、1000kWの出力が基準とされている(固定価格買取制度では、200kW未満、200〜1000kW未満、1000〜30000kW未満で区別された買取価格が設定されている)。小水力発電は、設備利用率が高く、安定的な電力が得られる上、環境にやさしく地域密着型なのが特徴だ。
具体的にはどんなところで使われているの?
 
そうだね。小水力だから、利根川や信濃川のような大きな川ではなく、小河川や農業用水路とか、上下水道施設など、落差と水量のあるところでは、小さな発電機を設置して発電できるよ。
昔、実際に発電していた小さな水力発電所を再利用しようという動きもあるって聞いたよ。
そうそう、新聞に出ていたね。小さくても数が増えれば馬鹿にならないからね。その潜在発電能力は1000万kWを超えるとも言われている。
地熱発電は文字通り、地下の熱水を利用するのね。
 
地下の熱水利用と言えば、昔から日本では温泉だね。なにしろ、世界有数の火山国だから全国いたるところに温泉がある。
そうね。また家族で温泉に行きたいわね。それなら、温泉が出るところを掘ればいいということ?
そうだけど、あとでもいうようにそう簡単にはいかないんだ。今日本にも、地熱発電所はいくつかあるんだけど、その発電量は、全発電量のわずか1%以下なんだ。この辺のことは物知り博士に訊いてみて。→物知り博士のQ&A
へえ、そうなの。さっき、お父さんが言ったように、日本は火山国だから、やはり地熱資源は豊富なのね。 どんどん作ればいいのに。
そうあってほしかったんだけど、そこに地熱資源があるとわかっていても、開発できなかったのには、いくつか理由があるんだ。
1つは、国や電力会社がそれほど興味を示さず、積極的に開発する気がなかったことだろうね。
そうなの? どうして?
 
電力会社管内でも、九州や東北、北海道などで地熱発電所を作ったところもあるが、原発や火力に比べて規模が小さいこともあって、それほど増えなかった。
電力会社が興味がないなら、他の業者がやればいいのに。そういう会社はなかったの?
いい質問だね。たしかに何社かは実際に開発している例があるよ。でも、残念ながら電力自由化前は大手の電力会社が、地域独占状態だったから、発電所を作っても電力会社の協力がなければ、売ることもできなかったんだ。
それに地熱開発もそんなに簡単ではない。まず、熱水のあるところを探す、井戸を掘る、掘ると言っても2000mほど掘らなければならない。うまく熱水が出てきたとしても、その処理がまた必要になる。蒸気だけを採ってあとは捨てるというわけにはいかない。地中から上がってきたものには、運転に支障を来すものや有害な物質が含まれている可能性があるから、それらを除去する必要がある。排水を海や川に流したりできないから、地中に戻す必要があるなど、結構面倒らしいよ。
ある石油開発会社が掘削の技術を活かせるとして参入したけど、高濃度のスケール物質に悩まされたそうだよ。結局は、規模を縮小して運転できるめどがついたところで、電力会社に売ってしまった。
そうか、なにごともそう簡単なものではないということね。
 
そうだね。そして、地熱開発が伸びないもう1つ大きな理由が、地熱のあるところの多くが国立公園などの中にあることだ。こうした公園の中で開発行為を行うことは原則、法律で禁じられているんだ。例外はあるけどね。
たとえば?
 
たとえば、大分県九重町にある阿蘇くじゅう国立公園内には、八丁原(はっちょうばる)発電所が稼働している。昭和52年に1号機、平成2年に2号機が完成し、その出力は11万kwで日本最大と言われている。うまくやれば、環境を破壊しない地熱発電は十分可能だといえる。
そうね。
 
さらには、お母さんが言った温泉も地熱開発のネックの1つなんだ。
 
へえー、そうなの?
 
温泉は比較的浅い地層の熱水を利用しているのに対し、地熱発電に使う熱水はもっと温度の高い、したがってもっと深いところにある熱水をくみ上げることになる。でも、もし地下で温泉の熱水と地熱用の熱水がつながっていれば、地熱用の熱水を大量にくみ上げることで、温泉が出なくなる、つまり枯れてしまう可能性がある。
そうか。温泉が枯れちゃったら、温泉を利用している旅館や観光地には死活問題ね。
 
そう、そのとおり。実際に調査して、温泉と地熱用の温泉とはつながっていないという結果が出ても、温泉で生活している人たちにとっては、なかなかOKとは言えないところがある。
そうね。
 
今、稼働している地熱発電所はこうした問題をクリアしているが、そこに至るまではいろいろな苦労や経費がかかっているということだ。
そうやこうやで、かつては、国も地熱発電を増やそうと国の費用で調査を行っていたし、さっき言ったように電力会社も、北海道、東北、九州を中心に数万kW級の発電所を作っていたけど、その後調査費用も大幅に縮減され、国も電力会社も積極的に地熱発電をすすめようという意思がしぼんでしまった。電力会社が作る地熱発電所としては1999年に八丈島につくられたのが最後になっている。
そうか、それは残念ね。
 
でも、最近、また温暖化抑制の観点からか地熱発電が見直され、国の調査や技術開発支援も行われているようだよ。電力自由化の影響で、電力会社の地域独占がなくなったので、新規事業者の参入も増えるかもしれない。
そうあってほしいわね。
 
これまで述べた地熱発電とは別だけど、温泉を利用した発電もあるんだ。地熱発電のように何万kWという大型とはいかないけど、100kW〜500kWの発電所がいくつか作られていて、実際に発電しているみたいだよ。
へえ。それなら温泉問題はないのね。だけど温泉って地熱に利用する熱水に比べたら温度が低いでしょ。それで発電できるの?
そうだね。どんなに高くても100℃は超えないね。だから水蒸気の代わりに低温でも沸騰する液体を使ったバイナリー発電という仕組みを使っているんだ。その辺の仕組みは物知り博士に訊いてみよう。→物知り博士のQ&A
なるほどね。これなら温度の低い温泉も利用できるし、温泉地でも反対はないでしょうね。発電した電気を利用できるし、一石二鳥ね。
そうだね。最後はバイオマスだ。前にも話したように、昔の薪利用と同じだね。詳しいことは物知り博士のQ&Aにも書いてあるよ。→物知り博士のQ&A 
要するにバイオマスは、原点に帰るっていうこと?
 
まあ、そうとも言えるね。でも、そのために森林をむやみに伐採したのでは、エコに反するよね。だから、間伐材や製材などで出てくる端材や建設廃材などを集めて燃料とするんだ。
間伐材ってなーに?
 
間伐材というのは、いわば間引きだね。うちで野菜の種を播いたら、たくさん芽がでてくるだろう?そのままにしておいたらどれも育ちが悪くなる。適当に間引いて間隔をあけることで、野菜が大きく育つ。森林でも同じだ。曲がった木や育ちの悪い木を切り倒し、残った木を真っ直ぐ大きく育てる為に必要なことだよ。
なるほどね。これも廃物利用ということね。
 
廃物利用と言えば、ゴミ発電というのもある。全国の自治体には、ごみ焼却所があるけど、ただゴミを燃やしているだけでは、もったいないし、CO2をただ排出していることになる。
そういえば、彩が行っている温水プールは、たしかゴミ焼却所の排熱を利用しているって、市民便りに書いてあったわ。
そう、いままでは、せいぜいその程度だったんだけど、これからはその熱を発電に利用しようというところが増えるんじゃないかな。そうなれば、CO2も相対的に減らせることになるし、電力自由化で自治体が電力事業者になることもできる。
ゴミは毎日出てくるから、資源不足にはならないわね。
 
そうだね。でもだからといって、ゴミを増やすのはどうかと思うけど。
 
そうね。
 
そうそう、忘れていた。バイオマス発電は他の自然エネルギー発電と違う点が2つあるんだ。太陽光や風力などは無限で、只で発電するんだけど、バイオマスの場合は、燃料が有限でかつ全く只でとはいかないんだ。その上、燃やすことでCO2が排出されることになる。
なんで。有限はわかるけど、廃物利用なんだから只でしょう。
 
そうなんだけど、間伐材にしてもゴミにしても切り倒したり、集めたり、運んだりするのに人手がいる、すなわち人件費や運搬の費用が発生するんだ。つまり、燃料そのものは無料としても、それを使うまでにお金がかかるということ。太陽光や風力のように発電所まで無料で運んではくれない。
なるほどね。でも、多少お金がかかっても、CO2が出ても、その分化石燃料が節約できれば、メリットは大きいわね。
あっそうだ。大事なことを忘れていた。バイオマス発電で発生するCO2のことだけど、これはもともとCO2を取り込んだ樹木を燃やした結果発生するものだよね。時間差はあるが、いわばプラスマイナスゼロともいえる。さらに、使った分を植樹などで増やせば、これらがCO2を吸収することで使った分の埋め合わせをすることになる。これを「カーボンオフセット」(排出したCO2を相殺する)というんだ。
なるほど。
 
それにバイオマス燃料をつくるための仕事は雇用を生むんだ。これは、地域経済にとってとても大きな意味をもつよ。通常、エネルギーを地域外(国外からの輸入を含む)から購入するためには地域外におカネを払わなければならないけれど、地域内のバイオマス資源を使う場合はおカネが地域外に出ないで、しかも地域に雇用を生むことになる。それによって地域の所得を増やし、地域でおカネが回り、地域への再投資も可能になるんだ。自然エネルギーの活用がひいては地域の再生・発展につながり、持続可能な地域社会づくりになるということがとても大事な点だ。
なるほど。自然エネルギーの活用が地域創生につながるということがよくわかったわ。


― 完 ―

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