埼玉自然エネルギー協会

 
 
 

トピックス

ここでは、気候変動・温暖化やエネルギー問題等に関する情報を分かりやすくまとめています。

 

最近のニュース

 
◆気温上昇
EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」が、2024年の世界の平均気温が産業革命前からパリ協定の求める1.5℃を上回る1.6度上昇したと発表しました。

◆最近の温暖化による災害、農水産物への影響
山火事:2025年1月ロサンゼルス近郊で1万8000棟が被災、少なくとも死者28人という大惨事になりました。山の乾燥、海水温の上昇、陸から海への強風などの条件が重なったことによるものと言われています。
日本でも同年3月岩手県大船渡市で市の面積の10%近くの2,900haの山林が焼失し、48世帯の住宅が焼けました。死者も1人出ています。さらに、岡山県や愛媛県でも発生しました。2023年には、世界で東京都の面積の50倍を超える約1190万haの森林が焼失しています。

水産業:サケ、サンマなどの大衆魚の不漁が目立つ中、スルメイカの漁獲量が、10年間で9割減少しています。海水温の上昇によって、孵化後の赤ちゃんが生き残れないのが原因の一つと言われています。

温暖化ストップのための世界および日本の目標

 
◆世界の目標
世界で、1.5℃目標を実現するには、2025年までに温室効果ガスの排出量を減少に転じさせ、今世紀半ばの2050年には、CO2の排出を地球が吸収する範囲内に抑えるネットゼロ(カーボンニュートラル)にすることが必要です。そのためには、2030年に2019年比で43%、2035年には同じく60%減らす必要があります。しかし、2023年の世界のエネルギー関連のCO2排出量は374億トンと過去最高を記録するなど、増加が止まっていません。

◆日本の目標
日本も温室効果ガス削減目標を策定し、2025年2月18日に国連に対し以下のような脱炭素責任目標(NDC Nationally Determined Contribution)を提出しました。詳細はこちら
<日本のNDC(国が決定する貢献)>
世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、我が国は、2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す。
なお、取組方針の詳細及び温室効果ガス別その他の区分ごとの目標・目安については、我が国のNDC達成に向けた総合的な実施計画である地球温暖化対策計画及びその関連資料に記載される。

<解 説>

日本のNDCでは、2013年を基準として、2050年までにネットゼロにする目標となっています。
2002年から2022年までの日本の排出・吸収量の実績(棒グラフ)と、2050年までにネットゼロを達成するため目標値(実線)を図に示します。


図から分かるように、2002年から20年間で最も温室効果ガス排出量が多かったのが2013年で14.1億トン(CO2換算。以下同じ)です。すなわち、日本は最も多かった年を基準にしています。 2019年の実績はこれより2億トン少ない約12.1億トンです。目標よりは約0.3億トン多いということになります。
ちなみに、2019年を基準として2050年にネットゼロを目指すとすると、2030年には35.5%減の7.8億トンに、2035年には51.2%減の5.9億トンに、2040年には67.8%減の3.9億トンにする必要があります。
 

第7次エネルギー基本計画

 
政府は、2025年2月18日に第7次エネルギー基本計画を閣議決定しました。
通産省が発表したエネルギー基本計画の概要によると、計画は2040年に向けた政策の方向性、脱炭素電源の拡大と系統整備、エネルギーシステム改革など13項目からなっています。
2040年に向けた政策の方向性(総論)では、以下のように述べられています。

・すぐに使える資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの我が国の固有事情を踏まえれば、エネルギー安定供給と脱炭素を両?する観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成を目指していく。

・エネルギー危機にも耐えうる強靭なエネルギー需給構造への転換を実現するべく、徹底した省エネルギー、製造業の燃料転換などを進めるとともに、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用する。


<解 説>

エネルギー基本計画は、温室効果ガス排出量削減目標を実現するために、その中心である発電等でのCO2排出量を減らすことを目的としていますが、今回の計画の特徴は、再生可能エネルギーと原子力発電については、電力の安定供給と二酸化炭素(CO2)の排出量削減を両立するために「最大限活用する」との文言が明記されたことです。
「可能な限り原発依存度を低減する」という2011年の東日本大震災以降の政策の大方針を放棄して、原発を「最大限活用する」というまったく正反対の方針に切り替えたことになります。

原発をエネルギー源としてはなりません。福島の廃炉の見通しもなく、地域を元に戻すことはできず多くの被災者が帰還できないこと、再び原発が地震などで事故を起こせば日本を破滅させること、ロシアが戦争になった場合は日本の原発を攻撃目標にするという報道(英紙フィナンシャル・タイムズ)もあり安全保障の見地からも論外であること、通常の運転であっても、被曝の危険、数万年にわたる核のゴミを抱え続けること等々、原発は危険極まりないものです。

再生可能エネルギーについては、「電力部門の脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、関係省庁が連携して施策を強化することで、地域との共生と国民負担の抑制を図りながら最大限の導入を促す。」としているが、第6次エネルギー基本計画(2021年)では、2030年の電源構成の目標として36~38%としていたのに、今回の計画では、2040年の目標を4~5割程度としています。10年間で大きく増やすような計画にはなっていません。(表参照)

私たちは、真剣に再エネの活用と省エネに取り組む必要があります。