Q1:再生可能エネルギーってなんですか。
A1:再生可能エネルギーというのは、一度利用してもすぐにまた利用できて、資源として枯渇しないエネルギー源をいいます。すなわち、自然エネルギーとほぼ同じ意味で使われます。
石炭や石油などの化石燃料や、原子力発電に使われるウランなども自然の産物を利用したものですが、地下から掘り出して使ってしまうと、再び使うことはできません。いずれは地球からなくなってしまうことから、枯渇エネルギーといいます。
これに対して、太陽光はほとんど無限に地球に注がれているエネルギーであり、風も絶えることはありません。水力や地熱もそうです。
なお、日本の法律(エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律)では、「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、およびバイオマスが再生可能エネルギーとして規定されています。
資源エネルギー庁のホームページ(http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/outline/)に再生可能エネルギーの種類と特長が記載されています。参考にしてください。
Q2:日本の自然エネルギーの普及率はどれくらいですか。
A2:日本の発電量に占める自然エネルギーの割合は、約6%です(2014年度。1万KW以上の水力発電を除く)。うち、太陽光が2.2%、風力が0.5%、地熱が0.2%、バイオマスが1.5%、小水力が1.6%となっています。固定価格買取制度による太陽光発電の伸びが大きく、2014年の年間導入量は約900万KWで、同年度末での累積設備容量は2400万KWを超えたとのことです。累積導入量では、ドイツ、中国に続き世界で3番目となっています。
しかし、風力は累積導入量が約300万KW程度(2014年度末)で、年間導入量も22万KWにとどまっています。太陽光に比べ騒音等の環境アセスメントが必要になるため、その手続等で普及が遅れているものと思われます。ちなみに、世界では、累積導入量が3億7000万KWに達し、普及が進んでいます。
このほかの自然エネルギーを含め、さらに詳細について知りたい場合は、下記資料をご参照ください。
参考資料:自然エネルギー白書2015(環境エネルギー政策研究所)
サマリー版:http://www.isep.or.jp/images/library/JSR2015summary.pdf
Q3:原子力発電の仕組みについて教えてください。
A3:簡単に言えば、原子が核分裂する際に発生するエネルギー(熱)を利用して水を加熱し、得られた水蒸気でタービン(発電機)を回転させて電気を得る仕組みです。使われているタービンなどは火力発電と同じですが、水蒸気を発生させるのに原子の力を使っているところが火力発電と異なるということです。
原子力発電にはウラン(U)という周期表92番目の元素を燃料として使います。このウランには、いくつかの同位体が存在します。同位体とは、原子核の陽子の数は同じですが、中性子の数が異なる(したがって質量の異なる)グループです。ウランの同位体の主なものは、238Uと235Uです。このうち、235Uが核分裂を起こし原子力発電の燃料になります。この235Uは天然には約0.7%しか存在しません。このままでは燃料にならないので、質量の違いを利用して遠心分離という操作で235Uの濃度を数%に高めた(濃縮)ものが使われます。
Q3-2:核分裂について説明してください。
A3-2:核分裂とは、大きな原子核が分裂して小さな原子核になることを言います。
235Uが核分裂を起こすと、熱エネルギーと核分裂生成物(ヨウ素131I・セシウム137Cs・ストロンチウム90Sr・クリプトン89Krなど)のほかに複数個の中性子が飛び出します。この中性子が他の235Uに衝突することで、次々に連鎖反応が起こり、やがて爆発に至ります。これが原子爆弾です。
原子炉では、235Uから飛び出した中性子の一部を制御棒(カドミウムCdやハフニウムHf)に吸収させその数をコントロールします。また、中性子は通常高速で飛び出しますが、これでは他の原子核に衝突する確率が少なくなって核分裂が起こりにくいため、減速させる必要があります。そこで核燃料を水の中に入れ、飛び出した中性子を水の水素原子と衝突させることで減速させます。また、水は原子炉を冷却する役目も持っています。このように、中性子をコントロールすることで、核分裂を爆発的に起こすのではなく、穏やかに定常的に起こし、発生する熱エネルギーで水蒸気を発生させているのです。
原子炉には加圧水型、沸騰水型などいくつかの種類があります。それぞれの構造図については、「原子炉 構造」をキーワードにしてインターネットで検索してみてください。
いずれも、135Uを含む燃料棒を水の中に入れ、その間に挟んだ制御棒を上げ下げすることで核分裂を制御しています。中性子がすべて制御棒に吸収されると、核燃料棒の核分裂が止まります。これが原子炉停止です。
Q3-3:原発は安全と言われていましたが、福島の事故でそうではないことがあきらかになりました。世界で過去にこのような事故はなかったのですか。
A3-3:これまでに、世界では福島の事故を含めて、3件の原発事故が発生しています。2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島の原発事故は世界最大規模といわれています。津波で電気系統が破壊され、このため、冷却水の水位が下がり、核燃料が露出して熱で溶け出すいわゆるメルトダウン(炉心溶融)による事故でした。4基の原子炉のうち、3基が水素爆発により破壊されました。
1986年には旧ソ連のウクライナのチェルノブイリで原発事故が発生しています。この事故は実験作業を終え、原子炉を停止しようとした時、なんらかの理由で原子炉内の出力が急激に上がり、制御できなくなって大爆発に至ったものです。この爆発で高濃度の放射性物質が大気中に大量に拡散しました。その範囲は数千qと言われていて、放射能による健康被害が報告されています。
さらに遡ると、1970年にはアメリカのスリーマイル島でも原発事故が発生しています。これは福島の事故と同様、冷却水が失われたことによって核燃料が溶け出した事故でした。
ちなみに、たとえば100万キロワット級の原子力発電所を1日運転すると、高レベル放射性物質が約3s発生するといわれています。広島に落とされた原爆によるいわゆる「死の灰」は約1sと推定されていますので、実にその3倍量です。この原子炉を1年間フル運転すると、高レベル放射性物質の蓄積量は、広島原爆の約1000発分ということになるのです。
Q3-4:放射線と放射能はどう違うのですか。また、放射線の影響について教えてください。
A3-4:放射線というのは、核分裂に伴い原子核から放出されるもので、主なものは、アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、ガンマ線(γ線)です。
これらの放射線を放出する能力が放射能です。時には、放射性物質そのものをさすこともあります。
α線やβ線は高速の粒子(α線:ヘリウムの原子核。β線:電子)の流れで、粒子線と言われるものです。γ線はX線よりも波長の短い電磁波の1種です。物体を貫通する性質とか電気的性質などがそれぞれの放射線で異なります。たとえば、γ線は貫通力が高く、コンクリートの場合は50p以上の厚さがないと遮蔽できませんが、α線やβ線は家屋の壁を透過できません。
しかし、いずれも高いエネルギーをもっており、それが物質(分子)に照射されると、その物質が化学変化を起こします。たとえば、人間や生物に放射線が当たると、体内の遺伝子や酵素などに作用して化学変化が生じ、細胞の壊死、突然変異による異常細胞(癌など)への変化などさまざまな悪影響が現れます。
Q3-5:私たちの健康への影響についてもう少し詳しく教えてください。
A3-5:健康への影響について話す前に、福島の事故のあとの報道でもたびたび見られたシーベルトという単位についてお話しします。
シーベルト(Sv)というのは、放射線が人体に影響を与える度合い(線量当量)を示す単位です。千分の1をミリシーベルト(mSv)、百万分の1をマイクロシーベルト(μSv)で表わします。
ある物質が放射線を吸収する単位をグレイ(Gy)といい、Sv=k×Gyで表わされます。kは放射線の種類や対象組織ごとに定められた修正係数です。
ちなみに、放射性物質が放射線を発生する能力(放射能)の単位がベクレル(Bq)で、具体的には、1秒間に何個の原子核が変化するかを示しています。
放射能と言えば、核爆発や原発がイメージされますが、実は、放射性物質は自然界にも存在しています。すなわち、私たちは常に弱い放射線を浴びていることになります。しかし、その強さは、日本では1時間当たりの被曝量にして0.1μSv程度、世界平均では0.2μSv程度といわれています。この程度では、私たちの健康に悪影響はほとんどありません。
しかし、放射線を短期間に大量に被曝すると数週間の潜伏期をおいて、確実に健康被害が現れます。これを「急性影響」と言います。
たとえば、1時間当たりの被曝量で、以下のような症状が現れます。
500mSv 血中のリンパ球の減少
1Sv 悪心、嘔吐、全身倦怠など
1.5Sv以上 白血球減少や免疫力低下など。死亡に至る場合もある
4Sv 被曝した人の半数が死亡
7Sv以上 被曝した人は全員死亡(1年以内)
急性影響の事例として、1999年9月30日に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故があります。これは、株式会社ジェー・シー・オーの核燃料加工施設で、臨界に達する恐れがあるため取扱規則で禁止されている作業にも拘わらず、これに違反する会社の方針に従い、作業員が放射性物質を扱った結果、臨界状態に達し、核分裂が誘発された事故です。3名の作業員が大量被爆しました。放射線医学研究所で治療を受けましたが、推定で16〜20シーベルトを被曝した人は83日後に、6〜10シーベルトを被曝した人は211日後にいずれも多臓器不全により亡くなりました。推定で1〜4.5シーベルトを被曝した人は、骨髄移植を受けて幸いにも退院できました。
急性影響も怖いのですが、さらに放射性物質が恐ろしいのは、潜伏期間の長い(数カ月以上)晩発性影響といわれるものがあることです。
放射線を少量でも浴びていると、白血病、癌、白内障、寿命短縮、不妊、遺伝的影響(遺伝子に傷がつき、被爆者の子孫に遺伝的障害が現れる)などが起こる可能性があります。
国際放射線防護委員会(JCRP)の2007年勧告では、比較的高い線量で短時間、あるいは低い線量でも長期間に、合計1シーベルトを被曝すると、5.5%の人が癌になり、0.2%の人に遺伝的影響が現れるとしています。また被曝がもたらすあらゆる影響での致死率は約5%としています。個人としては死亡する確率は高くないと言えますが、人口の多い集団になると多数の人が影響を受けることになります。
仮に1時間当たり平均10マイクロシーベルト(μ?)の放射能汚染地域に10万人が10年間住み続けたとすると、集団全体で 10μ?/h×24h/日×365日/年×10年×10万人=87600人・シーベルト を被曝することになり、その5.5%に相当する4818人が癌になり、175人に遺伝的影響が現れ、4380人が死亡することになるのです。
このように、高レベル放射性物質による汚染がいったん起きれば、その地域は隔離され、数十年あるいは百年以上もの長期間、居住はもちろん、そこを通過することもできなくなってしまいます。さらにその地域だけでなく周辺地域の被曝量の少ないところも、影響が長く続くことになります。工場の爆発事故などの、いわば一過性の事故とは全く性格が異なるということを認識しなくてはなりません。
注)本項の「放射線被ばくの早見図」は、放射線医学総合研究所のホームページ(http://www.nirs.go.jp/index.shtml)より引用したもの(URL:http://www.nirs.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/20130502.pdf)で、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の許可を得て掲載しています。
Q4:太陽電池の仕組みを教えてください。
A4:太陽電池は英語では、solar cellといいます。「あれっ、batteryじゃないの」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
そこで、太陽電池の仕組みについて説明する前に、”電池”という言葉について簡単に説明します。電池というと大方の方は、乾電池や自動車の鉛蓄電池を連想し、電気を貯めるというイメージがあると思います。
でも、太陽電池は電気を貯めるための電池ではありません。それなのに、なぜ電池というのか。昔、学校で習ったのを覚えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、世界で初めての電池はボルタという人が作ったいわゆるボルタの電池です。これは図1に示すように、化学反応で電気エネルギーを生み出す仕組みで、これが本来の電池(cell)なのです。cellは”細胞”の意味もあるように、単位である”室”のことであり、最小単位の仕組みを表します。電気を発生させる最小単位ということでcell、あるいはボルタ電池にちなんで"voltaic cell"とも呼ばれます。
太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変換する仕組みなので、"photovoltaic cell"(略してPV cell)とも呼ばれます。
それでは、太陽電池の仕組みをボルタ電池と比較して説明しましょう。
右上の図に示したのが、ボルタ電池です。電導性の溶液に浸した2種類の金属電極をつなぐと、電子を出しやすい金属(図では亜鉛。負極)から電子を受けやすい金属(図では銅。正極)に向かって電子が移動します。これによって、正極から負極へ電流が流れることになります。このとき生じる起電力(電圧)は金属の組み合わせによって決まります。
一方、太陽電池の仕組みを簡単に表すと右下の図のようになります。
ボルタ電池のような液体や金属は使わずに半導体というものを使いますが、原理的にはボルタ電池と同じです。すなわち、電子を出しやすい半導体(図のn型半導体)と、電子を受けやすい半導体(図のp型半導体)を図のように密着させます(これを接合といいます)。
このとき、光を当てると、光はn型半導体を透過して接合面に届きます。すると光のエネルギーによって変化が起こり、接合面で自由電子が発生し、これがn型半導体に移動します。一方p型半導体には電子の抜けた孔(正孔)ができます。両極を導線でつなぐと負極から正極へ電子(図中のe-)が流れ、電気が発生するのです。これを光起電効果といいます(photovoltaic effect)。
なお、図では分かりやすいようにn型半導体を厚くしていますが、実際には非常に薄いもので、光は接合面まで届きます。
Q4-2:半導体というのはどんなものですか。
A4-2:世の中に存在するいろいろな材料(物質)は、電気を通す性質によって、電導体(金属など)、絶縁体(ガラス、ゴムなど)と両者の中間的な性質をもつ半導体に分けられます。半導体には熱や光、電圧などを加えると電導性を示すものがあり、その特性によっていろいろなところに使われています。
金属は電導性を示すのは、金属元素中の電子(自由電子)が元素内を自由に動くためです。半導体の場合は外部からあるエネルギーを与えられることによって、元素中の電子(拘束された電子)が自由電子になることで電気が流れるようになります。太陽電池の場合は、光がエネルギーということです。
半導体としては、高純度のシリコン(ケイ素)やゲルマニウムが代表的なものですが、その他の元素や化合物半導体(元素の組み合わせ)、あるいは有機系(炭素化合物)の半導体もあります。
Q4-3:太陽電池に使われる半導体について教えてください。
A4-3:今、主として流通している太陽電池に使われている半導体は、主にシリコン系です。これには、高純度シリコン(純度99.999%以上)が使われています。
実はシリコンは、そのままでは電気を通しません。絶縁体です。しかし、高純度のシリコンに他の元素を微量加えると電気を通すことができます。このように微量の物質を加えることをドーピングといいます。難しい説明は省略しますが、たとえばシリコンにリン(P)やヒ素(As)を加えると、自由電子が出やすくなり、一方ホウ素(B)やガリウム(Ga)をドーピングすると電子を受け入れやすくなります。前者がn型半導体、後者がp型半導体です。
シリコン系としては単結晶系、多結晶系、非晶質系などがあり、それぞれ特徴があります。このほかに、銅‐インジウム‐ガリウム‐セレン(Cu-In-Ga-Se)を成分とする化合物系半導体も一部実用化されています。有機系など他の半導体を使った太陽電池も実用化を目指して研究開発が行われています。
Q4-4:太陽電池の起電力について教えてください。
A4-4:1つの太陽電池(photovoltaic cell)の起電力は、半導体の組み合わせによって異なりますが、シリコン系の場合はおよそ0.5 Vです。これを直列につないで電圧を10-20Vに上げたものをモジュールといいます。これが、一般にパネルと呼ばれる実用上の最小単位になります。モジュールをいくつか直列につないだ状態をストリングといいます。さらにストリングを並列につないだものをアレイといいます。
通常屋根に載っている10〜25枚のモジュールのひとかたまりがアレイに相当します。それぞれの関係は図に示す通りです。図では、4×4=16個のセル(実際はもっと多い)でモジュールを構成し、モジュールを5枚横につないでストリングとし、ストリングを6列つないでアレイとしています。この場合、合計24枚のモジュールでアレイを構成しており、モジュール1枚の出力が200Wとすれば、合計出力は24×0.2=4.8KWとなります。
こうして得られた電気を接続箱で集め、これをパワーコンディショナーに送って電圧をあげるとともに、直流を交流に変換(単相三線200V)してから家庭内および商用配線網に接続しています。
Q4-5:太陽電池に関する今後の課題はなんですか。
A4-5:太陽電池は自然エネルギー利用のホープとして、日本では最も大きなシェアを占めています。これは、長年の研究による発電効率の向上、量産化による低価格化によるものと思われます。特にコストはここ10年ほどの間に大幅に低下してきていますが、これは日本だけでなく世界的な太陽光発電の普及に伴う量産化の効果が大きいといえます。発電効率は現状では16〜20%程度です。
太陽電池の固定価格買取価格は年々低下していますが、今後も普及していくものと思われます。一方でさらなるコストの低下と発電効率の向上が求められており、今後も産学における研究開発は続けられるものと期待されます。
特にコストの低下は普及の重要ポイントと考えられます。シリコン系太陽電池の主原料であるシリコン(ケイ素:Si)は地球に豊富に存在する元素ですが、通常は酸化物(SiO2)として存在しているため、超高純度(99.999%レベル)シリコンを結晶として取り出すには酸素を除去しなければならず、コストがかかります。このコストを下げる、あるいは、他の材料、たとえばアモルファスシリコン(非晶質シリコン)や非シリコン(ゲルマニウムなど)、新たな化合物半導体などの開発、ドーピングの工夫などに関する研究開発が必要です。また半導体の薄膜化ということも利用面はもとよりコスト、効率の面から有効な課題と考えられます。
Q5:太陽電池を屋根に取り付ける方法を教えてください。
A5:太陽電池を家の屋根に取り付ける場合、屋根材(瓦、平瓦、金属板等)に応じて、いくつかの方法があります。そのいくつかを紹介します。
1)瓦葺きの屋根
○瓦に穴を開けて取り付ける方法
瓦を外し、金具をその下の垂木と呼ばれる木材にとりつけます。瓦に穴をあけ、金具を通します(写真左)。
金具にパッキングを通し、コーキング剤でしっかりと隙間を埋め、雨漏りしないようにしています(写真中央)。
これにフレーム(架台)を取り付け(写真右)、太陽電池を固定します。標準的に行われている取付方法です。
ただ、穴を開けるときに、どうしてもヒビが入ったり、割れてしまうことがあります。その場合に備えてあらかじめ別の瓦を用意しておく必要があります。同じ瓦があるときはいいのですが、古い瓦で代替品がないときは、施工できません。
雨漏り防止は万全を期していますが、経年変化でコーキング剤の劣化等により雨漏りの心配は皆無ではないかもしれません。
○瓦に穴を開けないで取り付ける方法
・瓦に穴を開けず、瓦の隙間を利用して金具を垂木に取り付ける方法があります。施工時に金具を取り付けるときに瓦をはずす方法や、外さないで隙間から金具を差し込み方法があります。屋根材に穴をあけないので施工時に割れたりヒビが入ったりする可能性は低くく、雨漏りの心配もなさそうです。
・最近は、瓦を外す必要がなく、既存の屋根(瓦葺き、金属葺きなど)にそのまま取り付ける固定方法もあります。これは、架台として、フレームを縦横に組み、これを屋根に被せるようにして載せて、屋根の側面(軒下)で固定する方法です。
上記2つの方法については、施工時の動画が公開されていますので、参照ください(http://太陽光発電見積もり体験談.com/category52/entry135.html)。
○太陽電池を瓦の代わりとする方法
これは、太陽電池を瓦の代わりにして直接取り付けるものです。利点としては、瓦と一体化しているので見栄えがいい、雨漏りの心配がない、風の影響を受けにくいなどがあげられます。家を新築するときに太陽電池を設置する場合に施工可能です。
ただし、欠点もあります。瓦とパネルの間に隙間がないため、特に夏場は高温になり、発電量が通常の上置きより低下する可能性があります。
また、価格的に通常の上置きタイプよりも高いといわれています。さらに、瓦と一体化して容易に取り外せないため、家屋の固定資産税の評価額が高くなることも考えられます。
2)金属板葺きの屋根
凸部がある場合は、その部分を挟み込む金具を取り付けることで、屋根に穴を開けることなく取り付けることが可能です。
Q6:太陽光発電所の設置基準や自治体の対応について教えてください。
A6: 太陽光発電に限らず、すべての自然エネルギー電力設備において、国の固定価格買取制度で発電し、送配電網に接続するには、経済産業省の「設備認定」を受ける必要があります。
設備認定にはその規模に応じて以下のような基準があります。
1)10kW未満の太陽光発電設備の場合
10kW未満の場合は「余剰電力」の売電、つまり発電された電気はまず住宅内の電力消費に充て、消費しきれなかった電気を電気事業者に供給します。以下の内容についての届出が必要です。この届出はホームページを通じて行うことができます。
(1)事業内容が基準に適合していること
保守点検・発電量維持に努める、定期的に費用・発電量を報告する、系統安定化等について適切に事業を実施、更新廃棄の際は不要設備を適切にな処分するなど
(2)事業が円滑・確実に実施されると見込まれること
電力会社との接続契約を締結する、土地利用法令を遵守する、適切な期間に運転を開始するなど
(3)設備が基準に適合していること
発電設備の安全性について法令を遵守する、3ヶ月以内に修理が可能な点検・保守体制、場所と設備の仕様を決定する、計量法に基づき電気量を計測できる構造であることなど
2)10kW以上の太陽光発電設備の場合
この場合は発電量の全量売却が可能です。ただし、10kW未満と同じような「余剰電力」の売電も可能です。設備認定を受けるには、10kW未満に比べて、さらに詳細な書類による届出が必要になります。
例えば50kW以上では、電気主任技術者の選任、保安規定の届出、「再生可能エネルギー発電設備の設置場所に係る関係法令手続状況報告書」や、土地の登記簿謄本の提出などが必要です。
また、農地に太陽光発電を設置する時は、設備認定のほかに農業委員会の承認が必要になります。農業を行わない場合は「農地転用」、太陽光発電装置の下で農業を行う場合(ソーラーシェアリング)は別の手続きを行います。
この「設備認定」のほかに、送配電網をもつ電力会社(今のところ地域の10電力。関東地方は東京電力パワーグリッド株式会社)の系統への接続同意を得ることが必須です。
なお、これまでは経済産業省の設備認定を得てから電気事業者に系統接続を申込み、調整を経て契約締結していましたが、今般の法改正により、2017年4月からは先に電力会社に系統接続を申込み、調整を経て契約締結することとし、その後に経済産業省の「設備認定」を受けるように変更になりましたので注意が必要です。
50kW以上の設備の場合は、送配電網をもつ電力会社によっては、「接続保留」を言われることがあります。「接続保留」の対象地域は各電力会社が公開しています。東京電力パワーグリッド管内では群馬県北部などに対象地域があります。
また、メガワット級の大規模な太陽光発電については今後は、入札制を導入する方向になり、制度の議論が行われ、基準などが大きく変わることが予想されます。
Q6-2:太陽光発電所の建設にかかる自治体の対応について教えてください。
A6-2: 太陽光に限らず、すべての自然(再生可能)エネルギーは地域に均等に存在しています。したがって、その恩恵はその地域の人が均等に受けるべきものです。個人で導入するのは別として、メガソーラーや小規模発電所などを建設する場合は、やはり、地域の方たちの同意、協力のもと行うことが不可欠だと思われます。
自治体の中には、住民の自然エネルギー導入を補助金などで支援しているところは多数あります。一方で、より積極的な自治体は、電力会社を作ったりして、積極的に自然エネルギーの利用に取り組んでいるところがあります。特に、飯田市(長野県)、湖南市(滋賀県)などでは、自然エネルギーを導入し持続可能な地域造りのための条例を定めているところもあります。湖南市は事業型の市民共同発電所の設置(1997年)、条例制定(2012年)ともに日本最初という、最も先進的な自治体と言えます。原発が存在する地域では、その再稼働を求める動きもありますが、自然エネルギーへの理解が進む地域では、自治体を巻き込んで、あるいは自治体が先導して導入を図っています。こうした動きは今後ますます広がっていくものと期待されます。
Q6-3:飯田市や湖南市ではどんな取り組みが行われているのですか。
A6-3: 飯田市の再生可能エネルギー条例によれば、市民は再生可能エネルギーの活用を優先的に活用できる権利があることが記されており、これを「地域環境権」と言っています。一方、湖南市の条例でも、「地域自然エネルギーは地域資源」であると宣言しており、地域に根ざして地域の発展に資する活用や地域内での公平性および他者への配慮といったことが示されています。
具体的な活動として、飯田市ではおひさま進歩エネルギー株式会社が設立され、市民出資によって資金を集める市民共同発電事業が行われています。これによって、市内公共施設をはじめとする多くの施設に太陽光発電設備が設置されています。また、条例により、地域自治組織とおひさま進歩エネルギー鰍ネどが共同で発電設備を設置する場合、市が調整・支援する仕組みも整備されています。既に、7地区の地域自治組織による発電事業が認定され、稼働を始めているとのことで、地域社会を構造的に再生する動きが加速しているといえます。
湖南市の市民共同発電事業では、地域の経済的自立を狙いとして、出資者への配当が地域商品券で行われています。地域商品券を発行することで、再生可能エネルギーと商工会や商店とのつながりが作られ、またこれを使うことで地域の特産品の流通が活性化するということが期待されています。
飯田市ホームページ(http://www.city.iida.lg.jp/)
湖南市ホームページ(http://www.city.konan.shiga.jp/)
Q7:風力発電機について教えてください。
A7:風力発電は文字通り風の力で発電します。昼間しか発電しない太陽光と異なり、夜でも風が吹いている限り発電します。しかし、風が吹かないと発電しません。発電が一定しないという点は太陽と同じです。
風力発電では、風車に風が当たり、それが回転することで発電機を回転させて電気を作ります。風力発電というと、海辺や山に立っている大きな風車を思い浮かべると思います。
あれを見て、あんなにゆっくり回っていて本当に発電しているの?と思う人が結構います。
大丈夫です。実は、中に増速機というものが組み込まれています。これは簡単にいえば、ギヤを使って回転速度を変えているのです。身近な例でいえば、自転車を思い浮かべてください。足でこぐところには大きな歯車があり、その回転をチェーンを介して後ろの車輪の中心にある小さな歯車に伝えています。足で一回こげば、車輪が数回回転します。車輪の歯車を小さくすればするほど、回転数は多くなります。
風車も同じです。大きなギヤに小さなギヤを噛み合わせることで、あのゆっくりした回転を発電機ではより速い回転(100倍程度)になるようにしているのです。風車の簡単な構造図については、たとえば、
こちら(中部電力のホームページ)をご覧ください。
風力発電機は太陽電池とは異なり、機械的な構造を持っています。したがって、台風など強い風が吹くときは、壊れてしまう恐れがありますので、逆に止めてしまうことになります。
Q7-2:風力発電の効率はどれくらいですか。
A7-2:風力発電の効率は、平均して20%くらいと言われています。たとえば、定格出力1000KWの発電機であれば、年間の平均発電出力は200KW程度、すなわち、100%であれば年間発電量は876万kWhとなりますが、実際の発電量はその20%の175万kWhということです。これには年間の平均風速が毎秒5m以上という条件が付いています。
風力発電機は風速が12〜14m/秒の時に、最大出力に達するように設計されています。これを定格出力といいます。しかし、このような強い風が常に吹くことはありません。たとえば、6m/秒の風の場合はどうなるでしょう。風力は風速の3乗に比例すると言われています。したがって、風速が半分になれば風力は1/8になります。当然、発電量は少なくなります。火力や原子力と異なり、風力発電では定格出力の電気を得ることはまれということです。
Q7-3:世界の風力発電の普及状況について教えてください。
A7-3:世界の風力発電の導入量は2015年末時点で433GW(4.33億kW)です(http://www.ren21.net)。国別では、中国(145GW)、アメリカ(74GW)、ドイツ(45GW)、インド(25GW)、スペイン(23GW)、イギリス(14GW)、カナダ(11GW)、フランス(10GW)などが10GW以上の設備容量を有し、これら8国で全体の約80%を占めています。日本は3GW未満でまだ普及はそれほど進んでいません。
風力発電を最初に実用化したのはデンマークといわれています。19世紀末のことです。現在でも、風力発電機の製造シェアはデンマークの会社が1位となっています。ちなみに、デンマークでは風力発電が6000基以上設置されているということで、まさに風力発電王国です。
Q8:地熱発電や温泉を利用したバイナリ―発電について教えてください。
A8:日本は火山国であることから、地熱資源に恵まれています。その発電ポテンシャル(能力)は2300万kW以上といわれており、米国、インドネシアに次いで第3位の資源量を誇っています。しかし、残念ながらこの豊富な地熱資源の開発や活用が十分になされているとはいえません。たとえば、フィリピン、メキシコ、アイスランド、ニュージーランドといった発電ポテンシャルが日本よりはるかに低い(1/4以下)国々の方がその活用という点でははるかに上回っています。電力でいえば、国内需要のわずか0.3%を占めるにとどまっているのが現状です。
現在、日本で稼働している地熱発電所は17か所(自家用を含む)で、その能力は515MWです(2013年6月)。一番古い松川発電所(岩手県八幡平市)は40年以上も安定して運転されています。原油価格が高いときは、火力発電に対して価格競争力をもっていたのですが、その後は下火になりました。しかし、東日本震災以降調査検討が進められ、現在7カ所が有望とされ、詳しい調査が行われているようです。
ちなみに、アメリカは最初に述べたように、世界最大の地熱資源を有していますが、設備能力も3,100MW(2011年)を超えています。さらに開発段階のものを含めると、最大で5,000MWを超えると言われています。
参考:NEDO再生可能エネルギー技術白書(第2版)第7章地熱発電(http://www.nedo.go.jp/content/100544822.pdf)
Q8-2:バイナリ―発電の仕組みについて教えてください。
A8-2:通常の地熱発電は、高温の熱水を地下から取り出し、水蒸気で発電機(タービン)を回し発電します。
しかし、温泉では最大でも100℃の熱水しか得られません。温泉として利用するには水で薄めて入浴に適した温度にしなければなりません。すなわち、せっかくの熱エネルギーをむざむざ捨てていることになります。
といっても、100℃以下の熱水では、発電機を回すことはできません。そこで、バイナリ―発電という方式で発電します。発電量は地熱発電には遠く及びませんが、温泉のような中低温の熱水でも発電できるのが特徴です。
バイナリ―発電というのは、加熱源系統と媒体系統の2つ(binary)の熱サイクルを利用して発電することをいいます。すなわち、加熱源である温泉水で、低温で沸騰する物質(低沸点媒体:ペンタン・イソブタンなどの有機物質、アンモニア・水混合液など)を温め、その蒸気でタービンを回すのです。
バイナリー発電を使えば、高温の温泉水の場合は、水で適温まで冷却する代わりに熱交換で水温を下げるとともに媒体を加熱することができます。また、温泉として利用した後の温かい水を利用することもできます。
したがって、地熱水のように深く掘削しなくても熱水源を見つけることが可能であり、中低温水でも発電に利用できることから、すでに湧出している温泉などを利用できます。このため、新たな環境負荷も小さく、源泉の枯渇や湯量にも影響を与えることは少ないといえます。
現在、長崎県の小浜温泉(URL:http://obamaonsen-pj.jp/)、福島県土湯温泉(URL:http://www.genkiuptcy.jp/)、兵庫県湯村温泉(URL:https://web.pref.hyogo.lg.jp/governor/documents/g_kaiken20140407_07.pdf)などで実際にバイナリ―発電が行われています。
Q9:バイオマスってなんですか。
A9:バイオマス(biomass)とはbio(生物体)のmass(集合体、その量)のことで、特にエネルギー源となりうる生物体(死骸・排出物を含む)のことをいいます。すなわち、バイオマスは、炭素、水素、酸素を主構成元素とする有機化合物です。地球上にもっとも大量に存在する生命体である植物は、太陽エネルギーを使って水と炭酸ガスから合成された有機物であり、バイオマスとは太陽エネルギーを物質化したものと言えます。
人類が人間として活動を始めたときから、バイオマスはエネルギー源として利用されてきました。現在でも昔ながらのバイオマスエネルギーに頼っている国も多く、世界のエネルギー総需要の15%をバイオマスが占めており、その大半は煮炊きあるいは灯火などの“伝統的”な利用といわれています。
なお、バイオマス、特に食料(糖、でんぷん)や油脂からバイオアルコール、バイオディーゼル燃料(BDF)などの代替自動車燃料の生産なども行われていますが、これについては、食資源・天然資源の利用として適切かどうかについて疑問がもたれています。
Q9-2:化石燃料との違いは何ですか。
A9-2:化石燃料である石炭、石油、天然ガスは太古の時代のバイオマスが、長大な時間をかけて変質したものです。これを人類が産業革命以後、とくに20世紀に入ってわずか100年あまりで消費し尽くす勢いで使っていて、固定された炭酸ガスを元の大気に戻している状態です。現状では、炭酸ガスの植物への固定はそのスピードに追い付けないので、化石燃料の大量消費は“持続的”ではありません。しかし、現在のバイオマスはその生長速度以上に消費しない限り、“持続的”であるといえます。このことから、バイオマスを “再生可能エネルギー“として見直す動きが、欧州を中心にこの30年あまり進められています。
日本ではオイルショック後もバイオマスは代替エネルギー源とは見なされず、技術開発が進みませんでしたが、地球温暖化問題の進展によって1990年代には検討課題に挙がってきました。
Q9-3:日本におけるバイオマスの位置付け、活用方法、効果などについて教えてください。
A9-3:国内でエネルギーとして利用可能なバイオマスの賦存量は、一次エネルギー需要量に対し6%です(経産省2009年)が、実際に利用されているのは0.8%に過ぎません。そして、そのほとんど(93%)は廃棄物由来です。家庭ゴミなどの一般廃棄物、パルプ産業から排出される黒液(木材パルプを作るときに化学的に分解・分離した際に発生する黒ないし褐色の液体)や建設廃材などの焼却における熱の利用、農業廃棄物や家畜糞尿、下水汚泥の発酵によるメタンなどのガスの利用があげられます。
廃棄物以外のバイオマスとしては、木質バイオマスが主要なものです。戦後日本の林業が低迷したこともあり、活用されることが少なかったのですが、2012年のFIT制度の導入以後、あらためて注目されるようになりました。
バイオマスの活用というのはとても奥深く、幅広く有益です。木質バイオマスについて言えば、まず建築材などの木材としての活用がありますが、それに加えて、その残材や廃材、あるいは間伐材の活用があります。これらは燃焼させて水蒸気を発生させ発電に利用するのですが、燃焼時に発生する熱を利用することもできます。これを熱電併給(コジェネレーション)といいます。さらに木質を化学的にガス化して、ガスタービンでコジェネに利用するという方法も開発も進められています。ガスにすると遠くまで運ぶことができるし、エネルギー効率もずっと高くなります。
また、酪農の分野では、家畜の屎尿の処理が大きな問題となっています。産業廃棄物として高い処理費用を払わなければならないとか、近隣から苦情が出るとか、観光地であればせっかく訪れた人々に「臭い思い」をさせてリピーターを減らしてしまう原因ともなっています。こうした屎尿も立派なバイオマス資源です。ヨーロッパなどでは、バクテリア発酵などでガス化して発電や熱利用、最後は肥料とするような活用が広く行われています。日本でも、北海道や東北地方などで始まっているほか、九州でも調査が行われています。
バイオマスから車の燃料をつくるアルコール燃料やバイオディーゼル燃料(BDF)というのもあります。これらは食料として利用できるものを直接原料とするというのでは本末転倒ということになりますが、廃棄物からのリサイクルであれば有効な活用方法です。日本でも、家庭などの使用済てんぷら油などからBDFをつくって活用しているところもあります。一方、日本では毎年1,700万トンもの食品が廃棄されているとのことで、これは世界一だそうです。現状では、こうした食物の残滓や生ごみは一部の先進地域を除いてほとんどが焼却されています。これらについても、屎尿の活用と同じようにエネルギーとしての活用が可能です。もちろん、まず廃棄量を減らすことが大事であることはいうまでもありません。
このようにバイオマスを活用することは、農林水産業という第一次産業と結びついて地域での持続的な経済社会づくりに貢献します。具体的には、燃料の供給(回収・運搬・製造など)という形で、地域に仕事、雇用を生むことになり、日本では地方の衰退が問題になっているだけに特に大事なことだといえます。
参考:一般社団法人 日本木質バイオマスエネルギー協会(https://www.jwba.or.jp/)
生ごみ・し尿汚泥系メタン発酵発電導入可能性調査報告書(http://www.city.miyama.lg.jp/file/temp/2366296.pdf)
京都市情報館(http://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000000008.html)
Q9-4:日本の木質バイオマスの資源量はどれくらいですか。
A9-4:木質バイオマスをエネルギーとして利用するには、日本の林業政策や国土保全計画からの視点が不可欠です。もちろん、無計画な伐採はできませんので、本来の用途への計画的な利用のもとで、副産物、廃材、間伐材等のエネルギー利用を図ることになります。
林野庁(2009)によると、国内森林の木質年間成長分は6300万m3といわれ、これをエネルギーに換算すると国内一次エネルギー供給量の約2%に相当します。このうち、エネルギーとして使用できるのは間伐材、伐採時に放置される林地残材、製材時に発生する廃材(おがくず、端材等)などであり、間伐材と林地残材が年間2000万m3、廃材は850万m3といわれています(後者には輸入材由来分が含まれていると思われます)。このことから、日本におけるエネルギー資源としての木質バイオマスの供給は、かなり限定的といえます。
しかし、地域、特に森林面積比率の大きい山間地では木質バイオマスエネルギー導入の有用性は高いと思われます。林業は山間地では基幹的な産業であり、林産物の6次産業化(生産(第1次産業)だけでなく、加工(第2次産業)、流通・販売(第3次産業)にも主体的・総合的に関わること【1×2×3=6次産業化】)などに発展的に取り組むなかで、バイオ燃料をつかったエネルギーの地産地消は、エネルギーコストの地元調達、雇用確保のみならず、エネルギーを活用した産業の起業など、地域の活性化につながるといえます。
Q9-5:木質バイオエネルギーの特質、用途、コストなどについて教えてください。
A9-5:木質バイオ燃料の使用形態としては、薪、おがくず、木質チップ、木質ペレットがあります。共通しているのは固形であり、かさばるため運搬に不向きなことです。このことから、地産地消するのが望ましい燃料といえます。また、吸水性が高いので、保存に注意が必要です。
木質バイオ燃料を発電に用いる場合、そのエネルギー変換効率は約20%で、化石燃料の1/2〜2/3程度です。これは燃焼時の発熱量が低いことが主な理由です。ただ、廃熱を利用するコジェネ発電にするとエネルギー変換効率は70%以上になります。この場合は、バイオ燃料をガス化してガスエンジンで発電する方法が多く使われています。
一方、ボイラー燃料として給湯用途に用いると熱効率は80%に達します。このことから木質バイオ燃料は熱源としての利用価値が高いといえます。寒冷地方では暖房用としてストーブ燃料にも使われます。以上のように、木質バイオエネルギーは熱利用が主で、発電は従と考えるのが妥当であるといえます。
ストーブ、ボイラーの燃料としては主に灯油や、A重油が使われており、木質バイオはその代替として用いられるため、コスト的には原油市場の値動きに影響されます。また、設備価格も割高になります。
重要なことは燃料を地元で調達するため、地域産業に貢献し、利益が地元に残ることです。給湯の場合、温泉施設や、公共施設、ハウス栽培向けが多く、一部では欧米に習った地域給湯システムも検討されています。日本の山間地域では家屋が分散していることが多いのですが、システムに合う地域作りから検討を始めた町(例えば、山形県最上町:http://mogami.tv/info/03shisetsu/04biomas.php、北海道下川町:http://hokkaido-tree.main.jp/shimokawa/tree/ikasu/など)もあります。
Q10:自然エネルギー発電によるCO2削減量について教えてください。
A10:自然エネルギー発電は、発電時にはCO2を発生しません(バイオマス発電を除く)。したがって、その分商用電力の発電時に発生するCO2を削減できたといえます。通常の商用電力によるCO2発生量(CO2排出係数)は、各電力会社によって異なりますが、平均して1KWH当たり、550gとされています注1(それぞれの電力会社の排出量については、資源エネルギー庁から毎年12月頃に前年度分が公表されています)。
しかし、太陽光発電がまったくCO2を発生しないかというと必ずしもそうではなく、製造時の電力消費や運転中のコントロール機器などによる電力消費でCO2を排出しています。したがって、その分の排出量を差し引かなければなりません。
これは、太陽電池の種類によって異なります。これを差し引くと、種類ごとのCO2削減量は以下の通りとなります注1。
結晶シリコン:504.5g-CO2/KWH
アモルファスシリコン:521.4g-CO2/KWH
CIS:524.0g-CO2/KWH
これに基づいて計算すると、たとえば、10KWの太陽光発電設備の場合、年間およそ10,000KWH発電するとして、年間のCO2削減量は、結晶シリコンの場合、約5トンとなります。太陽光発電にすることで商用電力に比べて、これだけのCO2の大気中への排出が削減されるわけですが、この数値だけではあまりピンときません。
そこで、杉が吸収するCO2に例えてみましょう。杉1本(樹齢40年)は年間8.8kgのCO2を吸収すると言われています注2。つまり、杉1本が大気中のCO2をそれだけ減らしてくれているわけです。したがって、10KWの太陽光発電の場合、1年間に約570本の杉の吸収量と同等のCO2の排出を抑制していると言えます。
注1)太陽光発電による削減量の基準については、太陽光発電協会のガイドラインをご覧ください。
注2)林野庁ホームページ(http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/20141113_topics2_2.html)
なお、杉換算については、いろいろなサイトに記載されています。樹齢50年の杉1本で14kg/年としているサイトが多いようですが、ここでは、上記HPに掲載されている数値を採用しています。
Q1:温室効果とはなんですか。
A1: 温室効果とは、たとえばビニールハウスのような温室の内部のように外気より高い温度を保持する効果をいいます。
つまり、地球の大気の温度すなわち気温が温室の中のように上昇する現象です。その原因となる物質を温室効果ガスといいます。その1つがCO2です。
この自然の温室効果は、私たちはもちろん、地球上のすべての生命にとって大変ありがたい現象です。現在地球の気温は平均15℃くらいですが、もし温室効果がなければ、地表の温度は−20℃くらいになっていただろうといわれています。ところが、人間活動とりわけ化石燃料の燃焼によるCO2増加で自然界のバランスが崩れ、人為的な温室効果を強め、これが地球温暖化・気候変動を引き起こしているのです。
実は、温室効果をもっているのは、CO2だけではありません。水蒸気(H2O)やメタンガス、フロンガス、オゾンなども温室効果を持っています。単位質量当たりの温室効果は、CO2の温室効果との比較で表わされます。たとえば、メタンが28、一酸化二窒素が265、フロンの中の六フッ化硫黄は23,500倍とされています(IPCC第5次報告の期間100年の値)。温室効果のある物質のうち、フロンガスは人類が作り出したものです。フロンのうち、成層圏のオゾン層を破壊するものの一部は現在その使用は禁止され、一部は2020年までにおおむね生産禁止となります。また、オゾン層を破壊しないフロンも生産規制の過程にあります。あとは、もともと自然界に存在するものですが、人間活動によりその排出量が増加しています。
Q2:温室効果はなぜ起こるのですか。
A2: CO2を例にとって説明しましょう。
CO2分子は炭素1つと酸素2つの3つの原子から成り立っていて、赤外線を吸収する(分子内に取り込む)性質があります。赤外線は熱線ともいわれ、それを吸収する物質を暖める性質があります。大気中に存在するCO2は地表から放射される赤外線を吸収します。そうすると、分子内で原子が振動し、エネルギーレベルが上がります。いわば興奮状態となります。
そうなるとその分子が赤外線を放射し他のCO2分子にそれが伝わります。その結果としてCO2が存在している大気自体の温度が上がることになります。これが地球温暖化といわれる現象です。
Q3:なぜ、CO2だけがいわば悪者扱いされているのでしょうか。
A3: CO2は地球上のすべての生命活動(呼吸)の結果として排出されるものです。一方、植物はこのCO2を利用していわゆる炭酸同化作用を行い、自らの体を作っています。排出と利用、この2つがバランスして大昔から大気中のCO2濃度はほぼ一定で推移してきました。その濃度は、280ppm(0.028%)程度であったと推定されています。
しかし、18世紀半ばからのいわゆる産業革命後、私たち人類は石炭をエネルギー源として利用しはじめ、その後、文明の発達とともに、石炭と同様に地下に眠っていた石油、天然ガスなどもエネルギーとして利用し始めました。我々は生活の便利さを求めた結果、これら化石燃料への依存度を高め、その消費を増大させてきました。化石燃料は、いわば大昔に植物によって固定化されたCO2といえます。それを地下から掘り出し、燃料として消費することで大昔のCO2が現在の大気に放出されることになります。一方で我々は森林や緑地などCO2を利用する植物の生息地域を減らしてきました。その結果、排出増、利用減によってバランスが崩れて大気中のCO2濃度が増加したのです。大気中のCO2濃度は、WMO(世界気象機構)によると、2015年には平均値が400ppmを超えています。このまま化石燃料の消費、森林の破壊等を続けていけば、さらにCO2濃度が高まり、その結果として気温のさらなる上昇が懸念されるということです。スーパーコンピュータを使った試算によれば、対策をとらないと21世紀末までには4.8℃上昇するといわれています。
地球温暖化の原因となる温室効果ガスには、CO2のほかにメタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、三フッ化窒素などもあります。また、何が「悪者」かと考えると、CO2などが悪者ではありません。大昔からのバランスを崩した我々人類こそが悪者といえるかもしれません。
Q4:京都議定書やパリ協定について教えてください。
A4: 先の質問の答えにあるように、コンピュータの予想では、このままCO2の排出が続くと、地球の気温は4.8℃上昇するだろうと言われています。ここまで、気温が上昇すると、異常気象を引き起こしたり、南極やグリーンランドの氷が融けだして、海面上昇を引き起こしたりする可能性が懸念されます。すでに異常気象は世界各地で見られています。
そこで、気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)という機関が、地球温暖化について世界に警告を発してきました。それに応えて、1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(COP:Conference of the Parties)という会議が開催されてきました。ここでは、世界の首脳が集まり、地球温暖化(気温の上昇)を止めるために、その原因とされるCO2など温室効果ガスの排出削減・抑制の方策が議論されてきました。
2016年末までに、22回の会議が開催され、COP3(1997年)では京都議定書が採択され、先進国にCO2の排出削減が義務付けられました。しかし、当時世界一の排出国であるアメリカが参加せず、中国やインドなど発展途上国は排出削減義務から除外されました。日本をはじめ同議定書を批准した先進国は全体として目標を達成し、排出削減となりましたが(日本は実排出量では未達成で、海外からのクレジット購入で達成)、参加しなかったアメリカや、削減義務がなく経済発展著しい中国、インドでは排出量が大きく増加し、2015年段階でも増加が止まっていません。
このためこのままでは、CO2濃度の上昇、気温の上昇が止まらないということで、パリで開かれたCOP21(2015年)では発展途上国も含めた世界すべての国が21世紀の後半までにCO2を含む温室効果ガスの人為的排出を実質ゼロにすることを目指すことで合意しました。これがパリ協定です。21世紀末の気温上昇を産業革命前と比べて2℃を十分に下回るレベルに抑え、努力目標で1.5℃未満に抑えるという目標で合意しています。排出目標は、国別に提案・設定されました。ただ、この目標のままではパリ協定の全体目標は達成できず、今後さらに強化のための議論が行われる予定です。
<以下の文章、要確認>
パリ協定については、2016年12月までに193か国とEU(欧州連合)が「署名」、正式加盟の手続きを示す「批准」も216か国が済ませ、2016年11月に発効しました。2016年12月の条約会議(COP22)に合わせてパリ協定の第1回締約国会議(CMA1)もモロッコで開催され、2018年までに詳細ルールを作ることが合意されました。
Q4-2:実質ゼロとはどういうことでしょうか。
A4−2: 温室効果ガスの人為的排出量と人為的吸収量のバランスをとるということで、CO2などをまったく排出しないということではありません。先ほどの答えにあるように、植物はCO2を利用して自らの体を作っています。したがって、たとえば森林を増やすことでCO2の利用度を高めることができます。また、化石燃料を消費しても排出されたCO2を地下に固定化することで大気への排出を抑えることができます。さらには、自然エネルギーなどを利用して、CO2の排出そのものを減らせます。こうしたことを行って、我々人類が大気中に放出するCO2の量をプラスマイナスゼロにしようということです。
Q5:大昔の気温やCO2の濃度はどのようにして測るのですか。
A5: 現在、大気の温度は寒暖計で、CO2濃度はガスクロマトグラフィーのような分析機器で測定します。でも何万年も前の大昔にはもちろんこれらの機器具はありません。
それでは、大昔の気温やCO2濃度は何を試料としてどのように知ることができるのでしょうか。
気温を直接測れない場合は、間接的に求めるしかありません。すなわち、何か気温と比例関係がある尺度があれば、その尺度を測定することで、逆に気温を求めることができます。
気温の場合は、酸素の同位体である18Oと16Oの比(18O/16O比)がその尺度になることが分かっています。
同位体とは、原子核中の陽子や電子の数が同じで中性子の数が異なる原子です。陽子や電子の数が同じなので、化学的性質はほとんど変わりませんが、物理的性質、たとえば重さが異なります。酸素の陽子の数は16個ですが、中性子を含まない16O、これに中性子が2つの18O、中性子が1個の17Oの3種類の同位体があります。現在の酸素同位体の存在率は16Oが99.76%、18Oが0.20%(残りは17O)といわれています。天然に存在する水分子の1000個のうち、18Oを含む水分子はわずかに2個ということです。ほんとうにわずかな差ですが、この酸素同位体比18O/16O(‰で表わされます。パーミル=千分率=0.1%)が温度と直線関係にあるのです。たとえば、海水の場合は、水温が高いと同位体比が小さくなり、水温が低いと同位体比が高くなります(逆比例)。したがって、試料の酸素同位体比を測ることで、海水温が推定できるのです。これを酸素同位体温度計といいます。
試料の年代がわかっていれば、当時の温度がわかるということです。
では、試料はどうするのでしょうか。古い時代の試料が残っているのは、海の底の堆積層と南極やグリーンランドなどの氷床です。海の堆積層の場合は、その中に含まれる有孔虫などの微化石の殻の酸素同位体比を調べることで有孔虫が生息していたころの水温が推定できます。
南極やグリーンランドでは何万年も大昔から降った雪が積み重なっていて、2000mほどの厚さの氷(氷床)になっています。当然のことながら、深いほど年代が古いということです。氷床からコア(氷の柱)をくりぬいてきて、一定間隔ごとに氷を切り取って溶かした水の酸素同位体比を測定します。
気温の場合は、水温とは逆に酸素同位体比と温度は正比例します。これは次の理由によると考えられています。気温が高いと海水中の比較的重い188Oの蒸発も増えるため、大気中の水蒸気に含まれる18Oが増加します。その結果、18Oが多く含まれた雪が降り積もります。逆に、気温が低ければ、18Oの蒸発量が減り水蒸気中の16Oが多くなります。
こうして、当時の気温が求められます。一方、氷床中には雪に含まれていた当時の空気が閉じ込められています。これを分析することでCO2濃度が求められます。
こうして、グリンランドの氷床では、過去12万年間のデータが得られるということです。
Q1:事業の撤退や倒産で、電気が止まるということはないのですか。
A1:いわゆる停電のリスクはないのかということですね。電気は、需要と供給のバランスを取ることが重要です。もちろん、供給が需要に追い付かないと電気不足となり、停電が発生します。といって、作りすぎても貯めておくことができないので、供給が需要を上回るとこれまた停電が発生する可能性があります。
これまでは、地域ごとの1つの電力会社がこれらの調整をやってきました。地域ごとで1社だからできたのです。
しかし、今回の自由化で、いろんな会社がいろんな電気を地域を超えて販売に参入してきます。したがって、停電のリスクを避けるためには、会社や地域を超えて、広域的に需給を調整することが必要になります。そのための機関が設立されることになっています。ここで、地域ごとに電気の使用量と発電量をモニターし、地域間の電力融通や供給の指示を行うのです。
さらにもう1つの問題として、契約した電気小売業者が倒産したら電気が止まるのではないかという心配が考えられます。今の世の中では電気なしの生活は考えられません。
でも、考えてみてください。電気は電線を伝って各家庭に届けられています。電力販売会社が倒産したからと言って、その会社と契約している家庭の電気だけを止めることはできるでしょうか。メーターをはずせば止まるかもしれませんが、少なくともそんなことがない限り、電気は供給されます。
さらに、国は、電力自由化にあたり、仮に経営破綻が生じてしまっても停電せず継続して電力が供給されるようフォロー制度の導入を進めています。「バックアップ契約(最終保障約款)」というものです。
バックアップ契約とは、新電力で何らかのトラブルが起きて電力不足が起きた時に、地域電力(東京電力など)が必要な電力を融通する、という仕組みです。新電力で足りなくなった分を、地域電力が代わりに送電網に流してくれるので、送電網全体の安定性も保たれます。
ということで、広域的に大きなトラブルが発生したという異常事態がない限り、停電は発生しない、すなわち、自由化によって停電のリスクが高まることはなく、これまでと変わりはないということです。
Q2:発電所を持たなくても電気を売れるのですか。
A2:発電所を持たなくても電気を売ることはできます。むしろ、今後は発電所を持って電気を売る会社は例外的になるかもしれません。
コンビナートなどの工業地帯で、石油会社や都市ガス会社などのようにすでに発電所を持っている会社は、自社で発電した電気を売ることができます。また、MW級の太陽光発電所を持っている会社も同様です。
しかし、たとえば携帯電話会社や電鉄会社のように発電所を持たない会社が、電気販売事業者として名乗りを挙げています。なぜ、そのようなことができるのでしょうか。その仕組みをご説明します。
電気は、発電、送電、販売という経路をたどって我々の家庭に届きます。つまり、@電気を作る、Aそれを家庭まで送り、B売るという大きく3つの過程があります。これまでは、この3つを1つの電力会社が独占していました。今回の自由化では、この3つを分離し、それぞれ別会社が運営するようにしたのです。
これによって、電気を作る設備を持っていなくても電力業界に進出できるようになったのです。
といっても、Aの送るというのには、送電線が必要です。これを作っていたのでは莫大な費用が掛かり到底採算がとれません。
そこで、すでに全国津々浦々まで張り巡らされた既設の送電線を借りることを可能にしたたのです。この送電線は電力会社が作ったものですが、発送電分離(→Q6)ということで、別会社が運営することになっています。
たとえば、太陽光発電所を持っていて、その電気を売る場合、発電所と需要家までは、送電線を借りるのです。借りるのでもちろん、託送料というお金を送電会社に払います。
さらに、発電段階でも電気を買うことが可能になりました。つまり、発電所を持たなくても、持っている会社から電気を買い、それを託送料(送電網使用料)を払って送電し、販売することができるようになったのです。
Q2-2:なるほど、発電所を持たなくても電気を売れる仕組みは分かりました。しかし、電気を買って、託送料を払って、需要家に売るとなると、コスト的に既存の電力会社より高くなりませんか。発表された電気料金プランでは、電力会社より安いのが多いのですが。
A2-2:そうですね。しかし、制度では発送電分離が施行される2020年以前でも、発電所と送電網を持っている10電力の発電所の電気も新電力の電気も共通の託送料を上乗せして販売することになります。したがって、たとえば、発電所を持っている会社から15円/kWhで買って、5円/kWhの託送料を払って、諸経費を入れると30円/kWhになるとしましょう。他社が28円/kWhで売り出すと、負けてしまいます。28円/kWh以下にしなくてはなりません。しかし、それでは、採算がとれません。そこで、携帯電話の料金とセットにして27円/kWhで販売するのです。いわば本業のもうけを削って、電気料金を安くし、それで携帯電話の契約が増えれば、全体として利益を確保できるというわけです。
Q3:日本の電源構成について教えてください。
A3:日本では年間約1兆kWhの電気が発電されています。発電方法の割合・構成をみてみます。
原発事故前の代表として2010年度をみると、火力が発電量全体の約65%、原子力が約25%、自然エネルギーは10%となっています。この段階では自然エネルギーの大半は水力発電で、太陽光発電・風力発電・地熱発電・バイオマス発電などはわずかでした。
2011年3月の福島第一原発事故以降、全国にある原発の大半が停止しました。2014年度をみると、原発はゼロで、火力が約85%、自然エネルギーが約15%です。自然エネルギーのうち水力発電の割合は約8%で、主に太陽光発電の増加で水力以外の自然エネルギー電力の割合が6〜7%に増加しています。
Q4:外国の電源構成はどうなっていますか。
A4: 電源構成は国によって差があります。先進国の多くの国では火力発電が多くなっています。原発の電気が4分の3を占めるフランス、原発が半分近くを占め、自然エネルギーとあわせて大半を占めるスイスやスウェーデン、逆に原発のないイタリアなどがあります。
自然エネルギー割合の高い国として、ノルウェーやアイスランドが2015年にほぼ100%、オーストリアとニュージーランドは約80%、カナダ、デンマーク、スイス、スウェーデンが約60%、ポルトガルが50%、イタリア、スペイン、フィンランドが約40%、ドイツとアイルランドが約30%、英国が約25%、フランスが約16%、米国が約13%、EU(欧州連合で英国を含む)が約30%、先進国(OECD経済協力開発機構加盟国)平均23%となっています。
新興国・途上国では、ブラジルが電力の約75%、中国が25%、インドが15%を自然エネルギーで賄っています。非OECD諸国全体では電力の23%を自然エネルギーで賄っています。
自然エネルギー割合の高い国は水力発電の割合の大きい国が多いものの、デンマークのように水力以外の自然エネルギーで60%を超える国もあります。
最近の先進国(OECD経済協力開発機構加盟国)の傾向として、自然エネルギー割合の増加、石炭火力と原子力の割合の低下があります。自然エネルギー割合は1990年に17%だったのが2015年に23%に増加、特に水力発電以外の自然エネルギーが1990年の2%から2015年には10%と大きく増加しています。
将来の自然エネルギー電力割合について、先進国ではデンマークが2050年に100%、ドイツは2050年に80%を目標にしています。新興国・途上国でも多くの国が自然エネルギー拡大の目標を掲げ、2016年に行われた条約会議(COP22)期間中に発展途上国48か国が自然エネルギー100%化を2030〜2050年のできるだけ早い時期に達成するとの目標を発表しました。地方・州ではスコットランドや福島県など、自治体ではサンフランシスコ市、シアトル市、ハンブルク市、ミュンヘン市、コペンハーゲン市などがエネルギー全体または電気全体で自然エネルギー100%化を目標とし、大企業でもGM、BMW、グーグル、マイクロソフト、アップル、バンクオブアメリカなど、自然エネルギー100%化目標を持つ所が増えています(RE100、http://there100.org/)。こうした風潮が自然エネルギー供給増を後押ししているといえます。
一方、石炭火力の電力全体に占める割合は、OECD諸国は1990年の40%から2015年には30%に低下し、英国、フランス、カナダ、デンマーク、フィンランドなど将来石炭火力をやめる目標・政策をもつ国もあります。原発の電力全体に占める割合は1990年の23%から2014年には19%に低下、ドイツ、ベルギー、スイスなど将来原発をやめる政策をもつ国もあります。
Q5:電力システム改革とはなんですか。
A5: 日本の電気事業制度を変える仕組みです。以前は発電所も送電網ももつ地域独占の10の電力会社が電気を売り、企業も家庭も埼玉県でいえば東京電力以外の電力会社からは電気を買えませんでした。電力会社を超えた送電網運営・電気の融通は限定的でした。しかし、「電力システム改革」では、送電網を広域的に運用することが推進され、小売が家庭や中小企業も含めて完全に自由化され、誰でも小売業者を選べるようになりました。
電力小売の自由化は段階的に進んできました。1999年の電気事業法改正で、2000年から「超大口」原則2000kW以上の大規模工場などに限り購入する電力会社を選べるようになり、その後も段階的に範囲が拡大されてきました。2016年4月からは最後まで残っていた家庭と中小企業も購入する電力会社を選べるようになりました。
電力を企業や家庭に売る電力小売会社は、発電所を自ら持つ必要はありません。もちろん発電所を持っている会社はその電気を売ってもいいし、それだけで足りない場合は、他社から購入した電気を売ってもよい制度になっています。いわば国が認め運用ルールを守れば、誰でも電気の小売りが可能ということです。
また、地域独占の10電力会社が基本的に独立して送電網を運用していましたが、電力システム改革の一環で、広域的に運用することに変わりつつあり、それを推進する機関(電力広域的運営推進機関:OCCTO URL:https://www.occto.or.jp/)ができています。
先進国の中には発電をする会社と送電網を持ち運用する会社の分離を求めている所が大半です。日本でも、2020年からは発電会社と送電会社を分離する制度になります。これを発送電分離といいます。
Q6:発送電分離とはどういうことですか。
A6:発電と送電を1つの会社が独占するのではなく、別の会社が運営することをいいます。たとえば、飛行場を持つ会社が航空会社を運営して、他社に航空機発着枠を与えず差別したら公正な市場と言えません。電気も同じで、送電網は公共インフラであり、電気の種類でなく誰が発電したかで差別的扱いをするようでは困るので、送電網をもつ会社と発電所を持つ会社を分離して、市場競争原理で公正を期すということです。
先進国の中には発電する会社、送電網を持ち運用する会社だけでなく、企業や家庭に電気を売る会社の分離も求めている所があります。また、単に会社を分けるだけでなく子会社など資本関係も無くすように求める国もあります。
日本では2020年からは発電会社と送電会社を分離する制度になりますが、2つの会社の資本関係を無くすことは当面求めない方針です。すでに東京電力は、発電会社と送電会社さらに小売会社の3社を分離してそれぞれ子会社として、それらを統括する持ち株会社体制に移行しています。
欧州では、発送電分離などの電力システム改革と並行して、単に電力市場で競争させるだけでなく、発電所の環境対策、環境負荷の小さな電気の普及のための制度も同時に進めてきました。たとえば、火力発電所への排出量取引制度(温室効果ガス総量削減義務化制度)、自然エネルギー電力の優先接続制度(自然エネルギー発電所を建てたら原則として送電網配電網に接続させる制度)、優先給電制度(自然エネルギー発電所からの電気は最優先、つまり発電所全部を動かしたら電気が余る場合は、自然エネルギー発電所から優先購入し、原子力や火力は後回しにする制度)などを導入しています。
これに対して日本では、国の地球温暖化対策計画でも、このような環境政策については基本的に企業の自主的取り組みに委ねることになっています。
Q7:自然エネルギー発電が普及するにはどんな制度上の問題がありますか。
A7:自然エネルギーで発電した電気を普及させるためには、自然エネルギーを扱う小売電気事業者の仕事がしやすいように、制度上の課題の解決が必要です。
自然エネルギーの電気は価格的に火力や大規模な水力発電よりも発電単価が高いのが現状です。一方、自然エネルギーは環境的にクリーンな地産エネルギーという特質があります。これを活かして自然エネルギー発電の普及を図る目的でつくられたのが固定価格買取制度*です。
この制度のもとでは、自然エネルギー電気を小売りしようとする小売電力会社は、この高い固定価格で仕入れたとしても、火力などでつくられたより安価な電気の単価(回避可能費用)で仕入れたことにして、差額を補償してもらうことになります。しかし、自然エネルギーだけでは、電力は不足します。不足分を補うための電気を調達する場合は、電力の卸市場で仕入れる必要があります。
しかし、この価格は高く、しかも変動するので、資金力の弱い自然エネルギー電気の小売会社の経営を圧迫することになります。結局、既存の大手電力会社が有利になるような制度設計になっていて、これが自然エネルギー発電の普及を妨げていると言えます。
*自然エネルギーによる発電を行う事業者の必要経費を補償するために自然エネルギー電気を固定価格で買い取る制度。通常の電気より高い価格に設定される。
Q8:グリーン電力証書って何ですか。
A8:グリーン電力とは、自然エネルギーで発電した電力のことをいいます。自然エネルギーで発電した電力は、通常の電気としての価値のほかに、CO2を発生しないという環境上の価値があります。さらにその分の化石燃料を節減したという省エネルギー的な付加価値もあります。これらの電力以外の価値を環境付加価値として位置付け、電力と切り離して証書という形で売買するシステムがあります。これがグリーン電力証書システムです。
具体的には、自然エネルギー発電事業者が、第三者機関(グリーンエネルギー認証センター)の認証を得てグリーン電力証書を発行し、これを購入した小売電力事業者は実際には自然エネルギー発電をしていなくても、自然エネルギーで発電したとみなされることになります。
たとえば、太陽光発電は夜間は発電しません。よって、太陽光発電所から電力を仕入れている小売り事業者は、その分の電気を市場から調達しなければなりません。その場合、当然のことながら原子力や火力で発電された電気も混じっていますので、自然エネルギー100%をうたうことはできません。しかし、市場から調達する分に相当するグリーン電力証書を購入することで、自然エネルギー100%の電気を小売りしていると宣言することができるというわけです。いわば、エネルギーロンダリングというところでしょうか。マネーロンダリングは悪い意味で使われますが、こちらはいい意味です。
グリーン電力証書にはもうひとついいことがあります。それは、自然エネルギー発電事業者が発行する証書を購入することで、そのお金が発電事業者に入りますので、必然的に自然エネルギー発電を経済的に支援することになるのです。
<参考>http://www.natural-e.co.jp/green/about.html