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このサイトでは、彩嶺さんちの家族の会話を通じて、自然エネルギーのことを学びます。

NPO法人 埼玉自然エネルギー協会

Saitama Natural Energy Association

よくわかる自然エネルギー発電のお話し

自然エネルギーってなに?

彩嶺さんちの家族

ある快晴の日の午後、新聞を読んでいるお父さんに、お母さんが話しかけるところからお話が始まります。
自然エネルギーっていったいなんでしょう?その普及を推進することでどういうメリットがあるのでしょうか。

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今日は快晴で、朝から太陽光発電がフル稼働ね。
 
そうだね。日中の電気はほとんど太陽光でまかなえているね。
 
自然の恵みってありがたいわね。
ところで、自然エネルギーって、文字通り自然に存在するエネルギーのことよね。でもなんとなく漠然としていてわからないわ。太陽光以外にどんなものがあるの?
自然エネルギーというのは再生可能エネルギーともいうけど、太陽、水、土、空気、生命体(バイオマスという)に由来し、繰り返し活用することができて、生き物と共生できるエネルギーのことをいうんだ。具体的には、太陽光のほかに太陽熱、バイオマスエネルギー、水力、風力、地熱、海洋エネルギーなどのエネルギーを指すんだ。詳しいことは物知り博士に訊いてみよう。→物知り博士のQ&A
 これらの自然エネルギーを活用すると、我々の暮らしや経済に役立つ熱エネルギーや電気エネルギーを産み出すことができるんだ。
熱利用もそうなんだ。自然エネルギー利用は発電だけじゃないんだね。そういえば、昔から太陽熱を利用した温水機があったわね。今でも屋根に載っているのを見かけるわ。
そうだね。自然エネルギー利用のはしりかもしれない。光の利用についても、ずっと以前から太陽電池の研究はされていて、人工衛星の電源として実際に使われていたんだけど、その後、本格的に太陽電池の商用化研究が公的研究機関や産業界でも行われ、急速に技術が進歩して、ついに我々が利用できるところまできたんだ。これは太陽光発電のところで話そう。
わかった。ところで、自然エネルギーがいいのはわかるけど、それを普及させるとどういう利点があるの?
その前に、我々の生活になくてはならないエネルギーについて話そう。昔は、エネルギーといえばせいぜい薪だった。明かりも暖をとるのも、煮炊きするのもすべて生物起源の薪を燃やしていた。今でいえばバイオマスだね。それが産業革命後、文明が急速に発達するにつれ、石炭、石油、天然ガスなどのいわゆる化石燃料、そしてウランなどの核燃料がエネルギーの中心となってきた。
そうね。昔学校で習った記憶がある。
 
今もこれらのエネルギーが中心だけど、これまでこれらに依存してきたことによって、大きな問題がいくつか起こっているんだ。
大問題?
 
最大の問題は、電気エネルギーを原子力発電に頼ってきたことだ。我々がその危険性を改めて認識したのは、2011年3月11日に発生した東日本大震災のなかで起こった福島第一原子力発電所の事故だ。
そうね。それまで、原発は安全だと信じていたわ。
 
そう、それまで原発は100%安全で、危険はないと言われていた原発神話が、もろくも壊れてしまった瞬間だね。
それまでにも世界では原発事故が起きている。1979年アメリカでのスリーマイル島での事故、1986年のソ連のチェルノブイリでの事故だ。
思い出したわ。チェルノブイリでの事故の後遺症で、多くの子供たちが今だに苦しんでいるんでしょう?
そうだね。これらの事故が新聞やテレビで報道され、我々は、原発の危険性を知った。そして事故によって生み出される放射性物質が地域を汚染し、数万年単位で生命体を脅かし続ける。いかに怖いものかを知った。
そうね。
 
ところが、日本では、チェルノブイリとは原子炉のタイプが異なっているため、日本での事故はありえないという政財官あげての「原発の安全神話」が横行し、我々もすっかり対岸の火事の気になってしまった。
日本ではむしろ原発推進になったのね。
 
そう、そして起こったのが福島の事故だ。それまで、日本では、原発は17箇所に50基以上あったんだ。さすがに、福島の事故のあとすべて停止してしまったけど。
でも、また動き始めているんでしょ。
 
性懲りもなく、また安全、安全という言葉がうごめき出しているね。
 
世界ではどうなのかしら?
 
北米やヨーロッパでは、電力会社の新たな原子炉発注がほとんどなくなるなど、原発の推進に大きなブレーキがかかっているらしいよ。
へえー。どうして?
 
福島の事故をうけて、放射能の恐怖に対する認識を新たにしたほか、原発の安全性への要求がいっそう厳しくなったんだ。そのため、ドイツが2022年までに原発をゼロにすることを決めたように政治的に止める決断をした所がある。そうでない所でも設備費用が跳ね上がったり、技術上の要求に対応するため工事が遅れたりして、原発そのものの建設が行き詰まっているんだ。
日本も見習ってほしいわね。
 
そうだね。原発の話は尽きないから、とりあえず、この辺にして次の問題に進もう。
2つ目の問題は、これも新聞やテレビで度々報道されている地球温暖化だね。この問題はあとでも話すので、簡単にするよ。
地球でいまのように温暖で、我々が生きていけるのは、実は温室効果ガスと言われる物質のおかげなんだ。温室効果については、物知り博士に聞いてみて。→物知り博士のQ&A
へええ、そうなの。
 
でも、なんでも「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、度が過ぎるとかえって悪影響を及ぼすことになる。地球はもともとその誕生以来、太陽の影響を受けて寒冷期や温暖期を繰り返してきた。しかし、今問題になっているのは人類の主として経済活動が地球の環境に影響を及ぼしているということだ。
つまり、物を作ったり、発電したり、あるいは車を運転することなどで、化石燃料を大量に消費しているが、それによって発生する二酸化炭素(CO2)を大気中に排出している。そのため大気中のCO2濃度が増加し、これが地球の気候変動に影響を与え、気温の上昇、熱波や豪雨・干ばつなどの異常気象の頻発、海水温の上昇・酸性化の進行等々が、生態系や農作物へさまざまな否定的影響を与えているといわれている。さらに地球の気温上昇がすすむと、もとにもどらない不可逆的な気候変動が起こるのではないかと心配されているんだ。
ふーん。
 
3つ目は日本だけの問題かもしれないけど、日本では化石燃料や原発の「燃料」のウランなどがほとんど産出せず、そのほとんどを海外に依存しているということだ。たとえば、石油は日本にもあることはあるが、消費量の0.4%くらいしか生産できていない。だからそのほとんどを輸入しているんだ。石油・液化ガス・石炭の輸入額は27兆6,000億円(2014年 輸入額の32%)にものぼる。
0.4%といわれてもピンと来ないわ。
 
うーん、そうだね。たとえば、日本の石油の消費量を2リットルのペットボトル一杯と仮定すると、日本での石油産出量は目薬の容器(16ml)の半分というところかな。
よくわかったわ。その石油は主に中東から輸入しているのよね。
 
そう、これまでにも中東危機などでオイルショックと呼ばれることもあったけど、石油の輸入はできていた。しかし、特に最近はインド、中国や新興国と呼ばれる国の経済成長の伸びが著しく、それにともなって、これらの国々でのエネルギーの消費量が増え、中長期的には、原油などを確保することがなかなか難しくなる傾向にあるんだ。
買えなくなるということ?
 
まったく買えないということはないだろうけど、価格が上がっていくだろうね。エネルギーは、食糧とならんで日本国民の暮らしや経済にとってなくてはならないものだから、国内で調達することが大切になるんだ。
なるほど、これからは国産エネルギーが必要っていうことね。
 
これらの問題を解決するための手段の1つと考えられるのが自然エネルギーの活用なんだ。そうすることで、現在、6%程度に過ぎない日本のエネルギーの自給率を上げていきたいね。
なるほど。
 
もちろん、自然エネルギーだけですべてが解決するわけではないけど、幸い日本は自然に恵まれているから、どこでもいろいろな方法で自然エネルギーを利用することはできる。これは大きな強みだよ。さらに、地域によってその地域に適した自然エネルギーがある。
たとえば?
 
たとえば、ここ埼玉県では快晴日数が日本一だから、太陽光発電が適しているとか・・・・・。
あっ、それ埼玉自然エネルギー協会のホームページにも書いてあるのを見たことがある。
うん。そのほかに風がよく吹くところでは風力発電、北海道や東北地方の日本海側では冬は雪が多いから、太陽光発電は向かない、でも風が結構吹くから風力発電が適している。水資源が豊かなところでは水力発電、地熱資源のあるところでは地熱発電、森林が多いところや酪農の盛んな地域ではバイオマス発電や熱供給というふうにね。そして、それぞれの地域に適した自然エネルギー資源を活用するから、エネルギー購入代金の域外流出をおさえ、地域の人々におカネがおちる、農林水産業など第一次産業と結んで、豊かで持続可能な地域社会づくりを促すことも期待できるというわけだよ。
なるほど。自然エネルギーで地域起こしっていうところね。
 
そうだね。でもそれだけじゃないんだ。普及を進める過程で、自然エネルギーを利用する技術、たとえば太陽電池、蓄電池、分散型エネルギーを需要に合わせてIT(情報技術)によってコントロールする技術(スマートグリッドという)などの研究開発が活発化し日本の産業界全体の活性化も期待できるというわけだよ。
なるほどね。よくわかったわ。でも、実際日本ではどれくらい普及しているの?
 
残念ながら、日本での自然エネルギーの普及は、外国に比べて遅れているんだ。2012年に固定価格買取制度が導入されてから普及は進んだけど、世界に比べるとまだまだだね。詳しくは、物知り博士が教えてくれるよ。→物知り博士のQ&A
そうか、よくわかったわ。お父さんの埼玉自然エネルギー協会にもぜひ頑張ってもらわなくてはね。
そうだね。頑張るよ。
 
ところで、自然エネルギーで発電した電気は高いというけど、どうして?
さっきお父さんが言ったように、自然エネルギーは、化石燃料などと違って国内どこにでもあるし、そもそも只でしょう?
バイオマスを除く自然エネルギーは、無尽蔵でかつ燃料費はかからないけど、化石燃料などと違って、希薄なエネルギーなんだ。
そうか、タンクに貯めておくことができないしね。
 
タンク? 貯める? うん?おもしろいかもしれない。光や風をタンクに貯めることができれば、天候に左右されずに安定的に発電できるかも・・・。
そんなことできるの?
 
今の常識ではできない。でも、発明や発見は意外なところにヒントがあるんだよ。常識では考えられないことを考える人は必ずいる。ひょっとして遠い将来には実現しているかもしれないよ。
そうなれば画期的ね。
 
貯めるといえば、電気も貯めるのが難しいんだ。少量なら乾電池や蓄電池に貯めることはできるけどね。蓄電池技術もさまざまな形で日進月歩、活用がすすんできているけど、まだ大容量のものはできていない。でも、別の形で貯めておくということもできるんだ。
へえー。どんなの?
 
揚水発電所というのがあるんだけど、聞いたことはないかい?
 
ないと思うわ。
 
一種の水力発電なんだけど、普通の水力発電所では、たとえばダムのような高いところに貯めた水を下に落として発電しているけど、このように一方的に流すのではなく、発電機を通った水を貯めておいて、それをまた高いところに戻すんだ。
その時は電気を使うんでしょ。
 
そう。だけどそれは、夜中、需要が少ないときに行うんだ。たとえば、原発などは簡単に止められないから1日中発電しなければならない。その電気を使って、夜中に下の水を上に揚げておいて、昼間の電力が不足するときに発電するというわけだよ。一種の大きな蓄電池ともいえるね。日本全国に40カ所、2,600万kW程度の能力があるといわれている。
おっと、横道にそれてしまったね。もとに戻そう。どこまで話したかな。
自然エネルギーは希薄だってとこ。
 
そうだったね。どこにでもある希薄なエネルギーを使って電気に変えるには、それなりの機器や設備が必要なんだ。
それが太陽電池ね?
 
うん、今はまだ、光を電気に変える効率もそれほど高くないから、必要な電気を得るには、数がいる。1枚のパネルの価格も今はそんなに安くない。それらがコストに響いて、他の発電方法に比べて単位(kWまたはkWh)当たりの価格が高いということだね。しかし、普及していくにつれて、大量生産でパネルのコストも下がり、研究開発でさらに性能も上がる、そうするとさらに普及が進む、いいサイクルになることが期待される。
自然エネルギーは、どこにでもあるということが利点でもあり、欠点でもあるのね。
 
そういうことだね。太陽は夜は出ないから発電しない。昼間でも曇っていたり、雨が降ると発電量は少なくなる。風にしても、吹いたり吹かなかったり、あるいは暴風もあれば、そよ風もある。まさに自然まかせなので、発電が一定しないんだ。ある人は、それをフラフラする電気と表現していたよ。
そうね。うちの太陽光発電も雲に遮られるとすぐに元気をなくして、発電量が下がっちゃうもんね。
そう、そして雲が切れると、すぐまた元気になっちゃう。まさにフラ、フラだね。ぴったりの表現だ。これが自然エネルギー発電の弱点といえば弱点なんだ。しかし、これを逆に利点に変えることもできる。
へええ。どういう風に?
 
これまでは、火力や原子力の大規模な発電所から需要側に長い送電線、配電網を通じて電気を送っていた。こうしたやり方にはリスクがあることがはっきりしたのが3・11のときの停電騒ぎだ。
あの時は大変だったわね。特に夜は周辺が真っ暗で。
 
うん、帰りの電車から真っ暗な街を何度も見たよ。しかし、自然エネルギーによる発電所などの分散型発電所が全国各地に無数にできると、フラフラする電気も電力の巨大なプールの中で「集合化」、「平滑化」されることになる。もともと電気は需要側でも絶えず変動するものだけど、これも「集合化」、「平滑化」されることになる。そうすると、大発電所が事故などで停止したとしても、大きな電力プールをコントロールすることで、停電することは少なくなる。さらに、前に言ったようにスマートグリッドという技術もある。こうした技術はすでにヨーロッパでは使われているし、日本でも今後大きく発展していくと思うよ。
そうね。期待しましょう。
 
もう一つ大事な点は、化石燃料やウランはいずれ枯渇する燃料だということだ。化石燃料は46億年もの地球の歴史のなかでたかだか3億年前以降に生成された生物由来のエネルギーの塊だ、ウランも地球の生成の過程でつくられたものだ。これらの特徴は、有限だということだ。
そうね。石油は、このままの需要が続けばあと40年くらいという話を学校で聞いたことがあるわ。
そうだね。今はもう少し長いといわれている。
ある人は、これらのエネルギーをエネルギーの缶詰とよんでいる。缶詰というのは、すばらしく効率がいいこの自然の贈り物をもっと大切に使わなくてはならないという意味でもある。これに対し、自然エネルギーは広く薄く存在しているが、つまるところ、数十億年の寿命を持つ太陽のエネルギーを源にしているので無限で、しかも持続的に利用することができる。この面からも化石燃料や原子力から自然エネルギーへの転換が必要だといえる。自然エネルギーをもっと活用して、原発の危険性や温暖化の進行を取り除くことが21世紀の課題といえるのではないかな。
原子力はCO2を出さないから、温暖化対策になるといわれているけど、どうなの?
 
たしかに、原発は発電しているときはCO2を排出しない。しかし、ウランの採鉱・精錬・濃縮の工程や発電を終えた後の廃炉・核廃棄物の処分などには大量のCO2が排出される。米国の科学者たちは、温室効果ガスの削減方法と原発について、「まずは一番大きな削減を一番早く、そして低コストで、リスクの少ない方法で実現できるものから始めていく必要がある。」と述べ、「原子力はこれらの基準を満たさない」と言っているよ。
なるほどね。日本の原発関係者はどう受け止めているのかしら。?
 
さあ、どうだろうね。彼らの主張は、原発は直接の発電コストが安く、発電時のCO2の排出もないから温暖化対策になるというものだ。でも核物質という人類にとっては最も危険なものを扱っているから、安全性を考えれば原発が安いというわけでもない。現在要求されている安全性能にあうような技術を取り入れれば、結果的に現在先進国で建設中や計画中の原発は火力や再エネ(太陽光、風力など)より高くなる傾向にあるといわれている。また廃炉の問題もある。このように原発にはいろいろな問題があるんだ。原発については、仕組みなども含めて物知り博士がいろいろ教えてくれるよ。→物知り博士のQ&A
わかった。読んで勉強してみる。
 
がんばって。いずれにしても、こんな危険なものを安全、安全と言って次々と作ってきたんだ。「我々はすっかり騙されていた」と、原発促進から反対に主張を変えた元首相もいる。それでもなお、原発を支持する人もいる。世の中、いろんな主張があっていいと思うけど、昔からいわれている「臭いものに蓋をする」ということは、もうやめて、現実というか事実を正しく知らせてほしいね。その上で、我々自身が、「さて、どちらを選択するか」ということだね。
そうね。いろいろ考えさせられたわ。今日は長いお話だったわね。お疲れさま。コーヒーでも淹れるわ。
それはありがたい。お母さんの淹れたコーヒーはおいしいからね。
 
またまた。なんにも出ないわよ。コーヒーだけよ。
 

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